DSHOT信号を作ってみる。その2

前のを壊しまったので新たに発注していたNucleoボードが届きました。
実験を再開してモーターを逆転させてみようと思います。

左が新たに届いたNucleoボード。
右は壊したやつ。

前回「値として0~47のどれかを送ると逆転するはず」という様な事を書きましたが、結局何番なん?というと、やはり資料が見当たらないのでbetaflightのソースを眺める事にします。

探し当てたのはこれ。ソースツリーを~/Gitに置いたとして次の場所にあるファイルを見ると・・・
~/Git/betaflight/src/main/drivers/dshot_command.h

・・・こういう記述がありました。

 typedef enum {
DSHOT_CMDtypedef enum {
DSHOT_CMD_MOTOR_STOP = 0,
DSHOT_CMD_BEACON1,
DSHOT_CMD_BEACON2,
DSHOT_CMD_BEACON3,
DSHOT_CMD_BEACON4,
DSHOT_CMD_BEACON5,
DSHOT_CMD_ESC_INFO, // V2 includes settings
DSHOT_CMD_SPIN_DIRECTION_1,
DSHOT_CMD_SPIN_DIRECTION_2,
DSHOT_CMD_3D_MODE_OFF,
DSHOT_CMD_3D_MODE_ON,
DSHOT_CMD_SETTINGS_REQUEST, // Currently not implemented
DSHOT_CMD_SAVE_SETTINGS,
DSHOT_CMD_SPIN_DIRECTION_NORMAL = 20,
DSHOT_CMD_SPIN_DIRECTION_REVERSED = 21,
DSHOT_CMD_LED0_ON, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_LED1_ON, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_LED2_ON, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_LED3_ON, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_LED0_OFF, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_LED1_OFF, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_LED2_OFF, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_LED3_OFF, // BLHeli32 only
DSHOT_CMD_AUDIO_STREAM_MODE_ON_OFF = 30, // KISS audio Stream mode on/Off
DSHOT_CMD_SILENT_MODE_ON_OFF = 31, // KISS silent Mode on/Off
DSHOT_CMD_MAX = 47
} dshotCommands_e;

enamを使ってコマンド毎の番号を定義しています。注目したのは20番と21番。
20だと正転、21だと逆転する様に見えます。更にソースを眺めると、コマンドを送る時は10回繰り返して送っており、それ以降は指定された回転方向になりそうな雰囲気です。10回送るのは少しくらい伝送エラーが出ても確実に伝える様にだと思います。

そこでNucleoボードのGPIOにボタンを2個追加し、これらを押すと回転数信号の代わりに20と21の値を出す様にプログラムを変更しました。

そしてESCとモーターを接続し、逆転ボタンを押した後に回転させると・・・何も起らず同じ方向に回っています。
何か違うのかなー。

上記リストを見ているとDSHOT_CMD_BEACON1というコマンドもあります。これはたぶんモーターを機体発見ブザー代りに鳴らす時のアレみたいですね。
betaflightからはブザーの音色を5種類から選べるのに対し、上記コマンドもBEACON1~5まであるので間違いないでしょう。値として1番~5番を送ってやればモーターから音が鳴りそうです。
そこでさっき取り付けた2個のボタンを押せば1や2を送る様にプログラムを変更しました。
そして試すと・・・やっぱり鳴りません。

うーん。
betaflightのソースをもっと細かく見ていけば解るんでしょうけど結構大変ですよね。

そこでFCから出てくる信号をオシロスコープで見ながら機体発見ブザーを鳴らしてみます。反転信号だと一瞬なので波形を捕まえ難いですがブザーだと繰り返し発生するので捕まえやすいのです。そして以下の事が判りました。

まず今までDSHOTで送る16bitのデータはこう思っていました。
値とCRCの間の1bit(右のLSB側から5番目なので以後「5bit目」と呼びます)は通常は0でテレメトリを要求するとき(RPMフィルタで回転数を取り出す場合等)に1にする。・・・と色々なサイトに書いてあります・・・

Hパルス幅が長いと1、短いと0を表します。

しかし実際にFCが出しているブザーコマンドを見ると1になっていました・・・

どうやら制御コマンドを送る時は5bit目を1にする様です。
ならばNucleoボードでもこの通りの波形を作ってみると・・・
鳴りますねぇ。
そして予想通りBEACON1 と2で音程が変わります。
また普段機体発見ブザーを鳴らすとピッ、ピッと断続的に鳴るのは FCから断続的にコマンドをON/OFFしている訳では なく、ボタンを押し続ければESC側で断続させてくれる様ですね。
試した様子を動画で・・・

では同様に逆転コマンドの20番、21番も5bit目=1でやってみます。
これもちゃんと逆転しますねー。
逆転に設定しておき電源を入れ直すと正転に戻ります(もしかするとどっかに覚えてるんじゃないかと思ったけど、そんな事ないですね)。
これも動画で・・・

という事でコマンドを送る時は右から5bit目を1にするのが正しい様です。という事はテレメトリの場合はどうなんでしょう?一つ判っているのはFCでRPMフィルターをONにするとDSHOT信号のH/Lが逆転している様です。
って事はテレメトリは5bit目ではなくH/Lの極性で決まるのかな・・・
あと回転数の値は48~2047だと思っていますが、コマンドである事が5it目で決まるのなら回転値は47以下を使っても良さそうな気がします。

BetaflightでRPMフィルターONの波形

このあたりはもうちょっと調べる必要がありそうですね。

Nucleoボードを壊した

やってしまいました。
先日STM32 Nucleo-F411REボードでDSHOT信号を作って、もう少し調べようと試していたら突然PCとの接続ができなくなったのです。

Nucleo-F411REボード

よく見るとICクリップが壊れてバネが見えており、これがボードのST-LINK部分に接触していたみたいです。

根本で折れてバネが見えている。

ST-LINKのファームを更新(なぜかこの時更新はできた)したりPC側のドライバを入れ直してもダメです。

このボード、既に3.3Vのレギュレータが壊れており外付けで動かしていました。
自作フライトコントローラーの実験で屋根くらいの高さから落とした事もあります。
もうそろそろ諦めて新しいのを発注しました。秋月電子で1850円の出費です。

DSHOT信号を作ってみる。

先日自作フライトコントローラーでRPMフィルターをいじった時DSHOT関係でハマって以来、気になっていました。
何でも理解を深める為には作ってみるのが一番、という事でSTM32マイコンボードでDSHOT信号を作ってモーターを回してみます。

DSHOT とはフライトコントローラーからESCに伝える信号のプロトコルで、 これによりモーターの回転量をESCに伝えます。
同種のプロトコルには色々(PWM,ONESHOT,MULTISHOT等)ありますが、恐らく現在のドローンレースで一番使われているのがDSHOTなのです。

DSHOT の概要については以前NONSAYAさんが紹介されています。
これを読んで大体のところは理解できましたが、実際に信号を作るためにはもう少し詳細な情報が必要です。で、色々探したけれど全体を通した仕様というか、本家のサイトの仕様書みたいなのが見つからないのです。

それでもこの辺りのサイトが参考になりました・・・

DSHOT概略

詳しい内容は上記サイトを読んで頂くとして、ここではサラッと概略を書きます。
まずDSHOT波形の例・・・

  • まず16発のHパルスを1セットとし、少しの時間を置いてこれを繰り返します。PWMっぽくも見えますが一発ずつパルス幅が長かったり短かったりします。
  • Hパルスの幅が短い場合が0、長い場合は1を示し、これにより16ビットのデータを表します。
  • 左から11bit分がスロットル量を表します(左がMSB)。この11bitの値は48から2047迄なので2000個の値を表せます。なお0~47は特別な意味を持ち、例えば0だとディスアームです(それ以外の値は資料が見当たりませんが、モーター逆転等が含まれる様です)。
  • 12bit目は基本は0ですが、ここを1にするとテレメトリ要求の意味となり、16発のパルスを送り終えた後に今度はESC側から信号を送ってきます。RPMフィルターではこの機能を使って回転数を読み出している様ですが今回の実験ではそこまでの域には達しておらず、一方的に回転数を伝えるのみです。
  • 13bit目から16bit目の4bitはこれまでの12bitデータに対するCRC値で、次の式で算出しています。CRC=(DATA ^ (DATA >> 4) ^ (DATA >> 8)) & 0xf
  • これまで一言でDSHOTと言ってきましたが実際にはDSHOT150、
    DSHOT300、 DSHOT600、 DSHOT1200等、速度に応じた名前がついています。150とか300とかの数字は1bitを表すパルス幅が150Kbpsとか300Kbpsという意味みたいです。なのでDSHOT300での1bit分のパルス間隔は1/300Kbps=3.33μSとなります。
  • DSHOT300の場合、パルス間隔は上記の通り3.33μSで、L(を表す短いパルス幅)は1.25μS、H(を表す長いパルス幅)は2.5μSです。

マイコンボードSTM32 Nucleo-F411RE

マイコンボードにはNucleo-F411REを使用します。このボード、フライトコントローラの実験で使ったときに3.3Vのレギュレータを壊してしまい、それ以来外付けレギュレータで無理やり動かしています。

ピロッと付いているのが3.3Vレギュレータ。

開発環境

開発環境にはSTマイクロエレクトロニクス社純正のCubeIDEを使用します。
これにはCubeMXというコード生成ツールが付属していて、周辺機能の初期化をGUIで設定できるので便利です(でもドキュメントが分かりにくい気がする)。

構想

DSHOTの信号をどうやって作りだしましょう?DSHOT150でも6.66μS毎に異なる幅のパルスを生成する必要があります。手持ちのESCがなぜかDSHOT150では動作しないのでDSHOT300を使うとなると3.33μS周期という結構な速さで更新が必要です。
タイマーをPWMモードで使うのがやり易そうですが、1パルス毎に幅を変える必要があるのでDMAを使って都度書き換えてみます。
これにはあらかじめRAM上のバッファにパルス数分のデータを格納しておき、1パルス毎にDMAコントローラーが (パルス幅を決める) CCRレジスタに転送していくのです。図にするとざっとこんな感じ。

作る・・・

実際にはRAM上のバッファはデータの16個分に加えて空白期間34個分の合計50個分を用意し、後半の34個分は常に値を0にしています。
以上の動作は一旦タイマやDMAコントローラーを設定すればCPUとは係りなく動き続けます。
なおRAM上のバッファはDMAが呼び出す割り込み処理ルーチン内で書き換える事にします。DMAの割込みはバッファの内容を半分出力した時点で呼ぶ事もできるので、これを用いて空白期間の間にデータを書き換えています。

そしてメインプログラム側ではDSHOTに出力する値を決めます。
今回はスイッチと可変抵抗を1個ずつ使い、スイッチはアーミング、可変抵抗は回転数を決める事にします。なのでGPIO一つとA/D入力一つが必要ですが、これもCubeMXの機能で簡単に設定できます(設定後の使い方がドキュメント見てもわかりずらいのですが)。

メインルーチンは初期化後無限ループに入ります。このループ内で可変抵抗の値を取るためAD変換を実施し、ESCに送る16bitのデータを作ります。
これをRAM上の仮バッファに置くところまでがメインルーチンの処理です。
そして仮バッファの値をDMAバッファに転送するのがDMA転送が半分終了した時点で呼び出す割り込みコールバックルーチンで行います。わざわざバッファを2段階にしているのはDMA転送中にバッファを書き換えてしまう事を防ぐためです。

詳細はソースを参照ください。
これ→DSHOT_MX.zip
プロジェクトディレクトリ丸ごとなので他のプロジェクトと同列の場所に置いて下図のメニューで開けると思います(試した限り大丈夫でしたがIDEのバージョンが違うとエラーとか出るかもしれません)。

動かしてみる

ESCに繋いでモーターを回してみたところを動画で・・・

そして・・・

あとモーターを反転させるのを試したいのですが、このあたりの情報が見つかりません。Betaflightのソースを解読すべきなのでしょうか?