MP9943GQ 同期整流式ダウンコンバータ ~その2~

昨日の投稿で最終的に下の様な波形になった事を書きましたが、やはり納得いかないのです。
出力にスパイク状のノイズが見えるのはプローブの当たり方の問題ですが、正弦波っぽく揺れるリプルが大きすぎます。また、そもそもSW出力が一定の周期でないのも変ですよね。

CH1:(黄)がMP9943GQのSW出力。CH2:(青)がインダクタを通った後の最終的な出力。

SWのプローブは取り外し、出力だけを20mVレンジで拡大するとこんな感じで振幅400mV程度で揺れています。

改めてMP9943GQのデーターシートを見ると下の様な波形が載っていました。
出力が3.3Vだったり負荷電流が3Aだったりで自分のとは条件が違いますが、リプルは10mV以下の振幅に収まっているしSW出力も一定周期で変化しています。自分のはやっぱりおかしいですよね。

もう一度回路図を眺めながら・・・

ここでMP9943GQのFB端子にどんな電圧が入っているかを見ようとしてプローブを当てると出力リプルの振幅が20mV程度に減ってしまいました。FB端子からプローブを離すとまた400mVに増えます。

どうやらFB端子回りの問題っぽいです。
苦し紛れにFB端子とGND端子の間に12pFのコンデンサをつけると振幅20mV程度に収まりましたが、あまり対処療法的なのは嫌ですよね。

何が原因でしょうか?
5V出力に設定する為、R7,R8を68K/12Kに設定していますがデーターシートの推奨値は41.2K/7.68Kです。
まあこんな値の抵抗は持ってないし、あまり影響なさそうとは思いつつ39K/6.8Kに変更しましたが、予想通り変化なしでした。

フィードバックの経路にスイッチングノイズが載るんでしょうか?
次にR7,R8の分割抵抗をチップに近づける様、図の場所に移動すると・・・

納まりました!

よく見るとデーターシートにもFB端子回りの抵抗はできるだけチップの近くに取り付けろと書いてありましたね。

5) Place the T-type feedback resistor close to chip to ensure the trace which connects to FB pin as the short as possible.

拡大しても振幅10mV程度になっています。

SW出力もちゃんと一定周期な波形になっているし・・・

たぶん、今度はちゃんと動作していると思います。

MP9943GQ 同期整流式ダウンコンバータ

いきさつ

MP9943GQモノリシックパワー社のDC-DC スイッチングダウンコンバータ用ICで、最近のドローン用フライトコントローラーのBEC回路にはこのICがよく積まれています。
ほいほい堂本舗ではこれまでスイッチングコンバーター用ICMP2359DJ,MP1584ENを試してきましたが、今回MP9943GQも試してみます。なぜこのICを試したいかというと同期整流回路が内蔵されているのです。

同期整流回路はコンバーターの効率UPを目的として使われる事が多いのですが、フライトコントローラーにとってはそれよりもダイオードを省略できるので基板面積を節約できて嬉しいのです。

以前製作したHOIHOIフライトコントローラRev2にはMP1584ENを使った下の様な回路を載せていました。

MP1584ENの内部にはINとSWの間にスイッチング用MOS-FETが入っています。コイツがONの時はVBATからインダクタL1に電流を供給し、OFFの時はインダクタL1に貯めたエネルギーがダイオードD2を通して流れます。なのでD2には結構電流容量の大きなダイオードが必要なのです。
一方、同期整流の場合、外付けダイオードに代わってIC内にもう一つのMOS-FETが入っており、内部でタイミングを合わせてON/OFFしてくれるのです。

上述のHOIHOI-FC Rev2では写真の様な容量2Aのショットキーダイオードを載せていました。MP1584ENの規格上は3Aの能力がありますが、ダイオードが大きくなるので2Aタイプで済ませています。MP9943GQになるとこのダイオードが不要なのに加え、IC自体のパッケージサイズも3mm×3mmとコンパクトになっており、この点でも面積が節約できます

試してみる

という事でMP9943GQを動作させる実験を行います。
例によってジャンクのFC基板からICとインダクタ(10μH)を取り出しました。
(データーシートによるとAMGMとマーキングしてある内、AMGがMP9943GQを示すそうです。
最後のMはyearコードとなっていますがMは何年を示すのでしょうね?)

Ki-Cadで回路を書いて・・・

基板のパターンも書きます。今回基板は切削するので広めに部品を配置して・・・。

それでもこのまま我が家のCNCで加工するのは精度的に厳しいので一旦加工データーをDXFで保存し、jw-cadに読み込んで切削しやすい様に修正しました。

作った基板がこれ。
(配線間にサンハヤトのソルダーレジスト補修液を塗っていますがハンダを載せたい部分にも付着してイマイチなので後で除去しました)

そして一通り部品を載せたところ。。。

なおベタパターンを設けたかったので両面基板にしています。
裏面はこんな感じ。。。

実は片面基板を2枚張り合わせたナンチャッテ両面基板です。

動作させてみる

3mmx3mmのQFNを切削基板にハンダ付けするのに苦労し、何度か加熱し直してようやく動作しました。

5Vの出力端子に負荷として5Ω抵抗を接続したときの波形です。CH1(黄)がICのSW出力。CH2(青)が最終的なDCDC出力。
DCDC出力にスイッチングノイズが載っている様にみえますが、これはプローブの当たり方の影響で、この時はプローブのワニグチクリップでGNDを取っていました。

DCDC出力のみにして200mV/Divに拡大。
このプローブの取り方だとスパイク状のノイズが振幅800mV程度で出ている様に見えます。

そこでプローブの取り方を下の写真の様に最短にしてみます。
(写真右上に見えている白いカタマリは5Ωのセメント抵抗)

すると・・・

スパイク状のノイズはかなり納まりましたね。
でも振幅数十mVでグニャと揺れているのでSW端子と重ねてみると・・・

スイッチング周期と同期している様です。
因みに無負荷だと綺麗に収まっています。


どうでしょう?まあこんなものなんでしょうかね?

スイッチングBECの製作

最近ラジコン/ドローンの投稿が多くなっていますがまたまたラジコン/ドローンネタです。

息子が通販で激安のESCを見つけてきました。スチレンペーパーの飛行機を作ったりするので多めに買ってストックしておくと便利です。

※ラジコン用語で ESCとはElectricSpeedControllerの略で要するにブラシレスモーターのドライバーです。ラジコン受信機やドローンのフライトコントローラーからの信号に合わせてモーターの出力を制御します。

見ると税別880円で20AのESCが4個入っています。但しBECが内蔵されていません。

※ ラジコン用語でBECとはBatteryEliminateCircuitの略で要はレギュレータです。独特な用語に思えますがプロペラを回すためのバッテリー電圧(7.4Vや11.1V)から受信機やサーボを動かす為の5V電圧を作り出す事で5Vのバッテリーを載せなくて済むという意味からバッテリー除外(eliminate)という事らしいです。

1個あたり220円。消費税と送料を入れても安いじゃないですか。BECだけ別に準備すれば安くESCが手に入るので早速購入しました。

4個入りを私が2セット、息子が3セットで、合計20個のESCを購入!
さすがにこんなに使うか?

そしてBECをどうするかですが、Aliexpressで見ると降圧DCDCコンバーターが80円くらいで売られているのでこれを買うのが簡単です。しかし最近はコロナウィルスの影響かAliexpressで買っても中々発送されないんですよね。という事で作ってみようかと思った次第です。

どんなのを作るか考えるに、負荷の電流が少なければ単純に3端子レギュレータ(シリーズレギュレータ)でも良いですが、飛行機に載せるとサーボを動かすのでそれなりに電流を流したいです。また発熱が多くて放熱板を取付けたりすると重くなってしまいます。となるとスイッチングレギュレータですよね。

部品箱には300円で大量に入っていたスイッチングレギュレータIC、LM2576があります。当初これを使おうかと考えたのですが結構古いのでスイッチング周波数が52KHzと低いんですよね。するとインダクターが100μHくらいのを付ける必要があり、コンデンサもそれなりに大きいのを使う必要があります。

そこで先日フライトコントローラーを修理した時に買ったMP2359のデーターシートを見ると、こちらはスイッチング1.5MHzで動作するとの事。これだとインダクターは4.7μH程度、またコンデンサーも小さくて済みます。

10個入り140円。2個使ったのであと8個残っている。

という事でMP2359を使ってみる事にしました。
いつもの様にKicadで回路図を書きます・・・

ほぼデーターシート記載のリファレンス回路図通りですがインダクタは部品箱にあった10μH(電流2.3A)の品に、その他もあり合わせの部品に合わせています。 MP2359はFB端子が0.81Vを保つ様に制御されるので6.8Kと1.2Kの抵抗分割だと計算上5.4Vの出力で若干高め狙いです。実際には抵抗の精度が5%なので動作後に実測する事にします。

Kicadでパターンを書き、久々にCNCで基板を削りました。

上がMP2359
下が切削後の基板

MP2359を搭載する部分は細かいのでショートさせてしまいそうです。そこで危なそうな部分にサンハヤトのレジスト補修材を塗って保護しました。

このレジスト補修材、何故か近所のホームセンターHANDSMANで売ってるんですよ。
1年に何個売れるんでしょう?

そして部品を載せました。基板の上の方にある大きな抵抗みたいなのが10μHのインダクタです。入口の10μFは回路図では電界コンでしたが部品箱に積層セラミックがあったのでそっちにしました。

もっと小型化できるなー。

裏側に表面実装部品を載せています。MP2359の取り付けに失敗してリードを折り、1個無駄にしましたが何とか完成。

こっち側に表面実装部品のMP2359とショットキーダイオードが載っています。

電源を入れるとほぼ思った電圧が出ているのでサーボ(4グラムタイプ)を動かしてみます。動画で・・・

動作は問題なさそうですが抵抗やコンデンサをチップ型にしてもう少し小型化したいところです。また幾つも作るなら基板も発注したくなりますが・・・しかしお金をかけるなら結局は上記の80円のDCDCコンバータを買う方が安いかもしれません。

まあこれでESC大量&BECの目途が付きましたが、どんな機体をつくりましょう?