原付バイクのCDIを作ってみる。

前回(タイミングライトの時)書いた様にCDIを作っています。
ネット上では色々試された先輩方がおられるので参考にしながら制作中。
なおCDIとはバイクの点火プラグに火花を飛ばす為の回路です。詳しくはこちら→Wikipedia CDI

上記Wikipediaにも書かれている通りCDIには交流式と直流式があります。
先日イジくったDioチェスタは直流式なのでCDI内部で直流12Vを2~300Vに昇圧し、これをコンデンサに貯めた後、一気にイグニッションコイルに流してプラグに点火します。ざっくり書くと下図の構造になっている様です。点火用の電源は直流12Vだけなので内部に昇圧回路が必要です。
最初はこれを対象に考えていましたが、Dioチェスタは息子が友達に売り払ったのでもうありません。

という事で今回は交流式のカブ系エンジン(カブ50とかJazz50。)を対象にしようと思います。
交流式のざっくりした回路は下図の様な構造。発電コイルが発生する交流が元々2~300VあるのでCDI内部では整流するだけで済みます。これはシンプルで済むのですが直流電源がCDIには入っていないので制御回路に複雑な処理(マイコンとか)を入れようとすると5V程度の電源が欲しくなって、これをどうするかを考える必要があります。

正規品CDIの波形

正規品CDIの動作に当たりをつけるため、Jazz50の波形を見てみました。
※注意:「正規品」と書いていますが中古バイクなので本当に正規なのかというと保証はありません。

まずステーターコイルからCDIに入ってくるAC入力

AC入力は本来正弦波のはずですがCDI内の整流回路の影響でギザギザの波形になっています。
ここから想像混じりですが以下の動作をしていると思います。

まずフライホイール1回転で4サイクル分の交流波形が出て、整流した電荷を段階的にコンデンサに貯めていく。その後点火する事で電荷が抜ける・・を繰り返す。

LT-Spiceで試した結果、整流部分は以下の回路になっていると辻褄が合います(TP1の波形)。
ACジェネレータの内部抵抗は分からないのでとりあえず波形が近くなる値を入れました。
また回路中V2、IGNは電荷を抜く為にあります(実物ではサイリスタに相当)。
ダイオードD2がなぜ要るのかはわかりません。これが無いと負電圧期間が全然違う波形になりますが、それでも動作上は問題なさそうに思えます・・・負電圧期間にD1に加わる逆電圧を減らす為かな?という予想をしています。そうであれば今回使用しているダイオード(IN4007)は逆耐圧1000VなのでD2を無くしても良いかもしれません。

次にタイミング入力とイグニッションコイルに出力する信号を見ます。
CH1(黄色)がタイミング入力、CH2(青色)がイグニッション出力
※2回分の波形が重なってしまいました。
タイミング信号は+の山の後に-の谷が来るみたいですね。この内の+3Vのあたりで点火している事が判ります。

とにかく動作するものを作ってみる。

最終的には進角・遅角機能を盛り込みたいですが、まずはとにかく動作するものを作ってみようと思います。
ネット情報を参考に最初に試したのは下の回路。

C1およびD1,D2でAC入力の振幅を2倍の直流に昇圧してC2に貯めておき、サイリスタ(TY625)にトリガを入れるとC2に貯めた電荷がイグニッションコイルから引き抜かれて点火する仕組みです。タイミング信号はQ1で受け、このままだと逆相になるのでQ3でもう一度反転してからサイリスタのゲートに伝えます。

AC入力を倍電圧整流にしたので上で見た波形にはならない筈で正規版CDIとは回路が違っていると思いますが、まずは確実に火花が飛びそうな方法にしています。またQ1,Q2を動作させるために外からDC5Vの電源を入れる必要があります。正規版CDIはDC電源は不要ですが、これも一旦確実に動作しそうな方式でやってみます。

ではバイク(息子が整備中のJazz50)に繋いで・・・

キックするとあっさりエンジンが掛かりました!!
では波形を見てみましょう。オシロを持ってきて・・・

まずはCH1:タイミング入力CH2:AC入力
予想通りAC入力はグニャグニャで正規版CDIとは違う波形になっています。
真ん中あたりのガクンと下がっているところが点火タイミングでしょう。


次にCH1はタイミング信号のままCH2をC2の左側端子(ほぼC2の充電電圧を表示)に繋ぎ変えてみます。
※タイムスケールは変更しています。
C2は倍電圧整流の効果で600V以上にまで上がっていて、点火の威力はあると思いますがコンデンサやサイリスタの耐圧ギリギリなので、倍電圧整流は止めた方が良さそうです。

では倍電圧整流を止めるためにC1を短絡してみます。
これでAC入力としてはLT-Spiceで試した回路と同じになりますが、今度はエンジンが掛かりません。
掛からないながらもキックの瞬間に撮った波形は下の通りです(プローブは上と同じ接続)。予定通りC2は300Vに下がっています。エンジンが掛からないのは電圧が下がったためでしょうか?


ならば点火エネルギーを増やすため、C2に1μFを追加して計1.47μFにするとエンジンが掛かりました。
(後で考えるとキャブレターの調子が不安定なのが影響していたのかもしれませんが。)
この状態でのCH1:タイミング信号CH2:AC入力波形を見ます。AC入力は倍電圧を止めた事で正規品CDIと似た波形になっています。

次にCH1:タイミング信号CH2:C2波形
C2電圧が少し低くなっています。容量が増えた事で上昇が間に合っていないんでしょうか?
でもこの方がエンジンが掛かりやすいのは容量アップでトータルの電荷が増えているからかな。

結局、1.47μF(コンデンサ2個)は寸法的に大きすぎるので1μFに減らしたところ、これでもエンジンは回ったので1μFを採用します。本当は0.47μFと1μFの間も試して余裕がある事を確認したいところですが、そんなに高耐圧コンデンサを持っていないのです。

以上を踏まえミニマムな構成で2号機を考えます。

まず倍電圧整流は止めます
あと5V電源もなくしたいですね。そうするとタイミング信号をバイポーラトランジスタで受ける事はできません。正規CDIがどうやっているのか判りませんが、たぶんそのままサイリスタのゲートに入れているのではないでしょうか?という事でタイミング信号をそのまま抵抗経由でゲートに入れてみます。この場合ゲート信号が-レベルの時、サイリスタのゲート逆耐圧である-5Vを超える危険があるのでダイオードD3で保護しておきます。
それとエンジンを停止させる機能が付いていなかったのでENの配線を追加しています(1号機では省いていたので停止させるのに手間がかかったのです)。バイクのキーをOFFにした時、ここがGNDに落ちるのでサイリスタがトリガーされなくなって停止します。

という事で2号機は下のかなりシンプルな回路にします。
(たぶん正規品もこうなっているんじゃないかと思っています)

これでもエンジンは掛かったので波形を見ます。

CH1:タイミング入力CH2:AC入力
正規CDIと同様の波形になっています。

CH1:タイミング入力CH2:IGN出力
特に何という事もないですがIGN出力を時間軸を拡大で見ました。


そして回っているところの動画。※音量注意。
なおピザのチラシは絶縁目的で敷いています。

走ってみる。

実際のバイクで走行テストする為、同じ回路で小型版を作りました。
正規品とほぼ同サイズ(コネクタは電線経由ですが)。

適当にビニールテープで絶縁して息子のカブに積んで走ってみましょう。
(上で試しているJazz50はまだ整備中で公道を走れないのです)

カブの正規CDIを外して・・・

いい加減な方のCDIを付けます。

そして家の周りを5分程走ってみました。
特に違和感なく普通に走れるし、走行後も熱を持つ様子は見当たりません。

という事で・・・

ミニマムなCDIを作成する事で理解が深まりました。たぶん正規品も同じ構造じゃないでしょうかね。
この後は進角/遅角機能を盛り込みたいのですが、マイコンを使うとすると上記の通りDC電源をどうするか問題が発生します。あんなガタガタで250Vもある電源から安定したDC5Vを作り出すのは難易度高そうです。空き端子から12Vを入れても良いのですが、そうするとバイク側の改造が必要です。でもできればCDIだけポン付けで交換できる様にしたいですし。。。
なおカブでも90CCのモデルだと進角機能付きのCDIを採用している様で、これがどうなっているのかは気になります。

スクーター Dioチェスタ(AF34) のバッテリーがリークする

息子が古くてボロいスクーターを先輩から(ほぼタダで)買ってきました。
その先輩も誰かから貰ってかなり長い間放置していた様で、各所が錆びていたりマフラーに土蜂が巣を作っていたり、まあポンコツですが、単にイジりたいだけで買ってきたみたいです。

で、色々修理したり悪いパーツを交換して走れる様になり完成かと思ったのですが、新品バッテリーなのに数日止めておくと上がってしまうという問題が見つかりました。
充電はできており暫く走るとセルモーターを回せるだけの電力が溜まるのですが、数日乗らずに止めておくと上がってしまうのです。

なんかリークしているっぽいですね。

そこでキーOFF状態でのバッテリー電流を測ると14mAも流れています
バッテリー容量は3Ahなので単純計算だと9日間で空となる(実際にはもっと早くダメになるでしょう)のはちょっと流れ過ぎですね。

という事で調べていく

そもそもキーOFFなのにどこに流れているんだ?

サービスマニュアルや回路図を持っていないので、とりあえずキースイッチの周りを見ると下の写真の様に3本の配線が出ています。
(あとで気付くのですが、この配線に問題がありました。)

なおネットの情報によると、このDioチェスタというスクーターは初期の2ストローク時代と後期の4ストローク時代があり、今回のは2ストロークエンジンを積んだAF34型です。そしてAF34の中でもマイナーチェンジがされており、キーシリンダーから出ている配線が2本の物もある様ですが、今回のは3本のタイプです。

キースイッチを開けてみるとツェナーダイオードらしき部品が入っていました。”4″と書かれているので恐らく4Vのツェナーらしいですが、何のため?

判らなくなってきたのでキースイッチ回りの配線を図にしてみました。
(現物からテスターで辿った結果なので間違いがあるかもしれません。また発電コイル回りは他の機種の回路図を元に推定して書いた部分もあります。あとこのCDIは5ピンですが世の中には同じAF34でも4ピンタイプのCDIもある様です。)

しかし色々と謎があります。

・キーOFF時のピンク線には12Vが加わっている。
 OFFなのにCDIに12Vが入りっぱなしというのに違和感があります。

・キースイッチ内部の4Vツェナーダイオード
 何これ?

その他(なかなかバイクの電気系は興味深いのです)・・・

・CDIは直流12Vで動作する通称「バッテリー式」です。
 CDI内で昇圧し瞬間的にイグニッションコイルに電流を流します。
・灯火類は交流のまま使用する、古いカブ等と同様の方式です。
 この方式では電圧が上がりすぎない様にレギュレートレクチファイヤで過電圧を防いでいるのですが、電球とは並列にレギュレータが入っているんですね。という事はレギュレータにガバッと電流を流して電圧を下げるシャント方式なんでしょうか?

ツェナーの働き考察

キーONの時、12V電源はキースイッチ内のツェナーダイオードを経由してCDIのピンク線に繋がります。ピンク線はこの時約8Vになっていました(ツェナーで4V落としている)。
これはどうやら「直結防止」が目的みたいです。このCDIはピンク線が8V前後の時だけ動作する様になっているらしく、ピンク線に12Vを加えてもエンジンは掛からず、またピンク線を開放しても掛かりません。これによりバイク泥棒が電源とピンク線の間を直結してもエンジンは掛からない仕組みになっている様です。
・・・という事でこの部分はキーOFF時のリークとは直接関係なさそうです。

リーク原因調査

そして問題のキーOFF時のリークですが、12Vが印可されたピンク線からCDIに向かって14.5mAの電流が流れていました。
ではこのCDIに入った電流はどこから流れ出すのでしょう?CDIの各端子を測ると以下の通りで、赤黒線が主な出口となっている様です(GNDからも僅かに流れ出していますが)。

配線色機能電流(CDIに入る向きを+)
赤黒12V電源-13.5mA
ピンクON/OFF+14.5mA
青白タイミング0mA
黄黒スパークコイル0mA
GND-0.7mA
リーク電流はピンク線から入って赤黒線から流れ出している。

と、ここまで判ったけど、なぜ赤黒線から流れ出すのかが判りません。ならばと赤黒線とCDIの間にダイオードを入れて逆流を阻止してみたところ、当然ながら赤黒線への流れは止まりましたが、今度はGND端子から6.9mA流れ出す様になりました。(リークは半分にはなるけど・・・まだ変。)

うーん。謎。
キーOFF時にピンク線に12Vを加えるならCDI内でリークを食い止めて欲しい気がしますね。
やっぱりCDIが壊れてリークしているのか?
悩んだ末、ヤフオクで同じ型のCDIを購入してみることにしました。

そして到着したCDIを取り付けると・・・やっぱり14.5mA流れています!!なんでー?

もう一度落ち着いて考える。

そもそもキーOFFの時にピンク線に12V加わっているのが不自然ですよね。キーOFF時に切り離していればリークの心配なんて無くなる筈。そういう風に改造しようかと考えて・・・ここでふと気づきました。そもそも現状の配線が正しい保証はないし何か配線が間違ってんじゃね?・・・と。

そういう目で見ると付属の鍵も純正っぽくないです。なに?JINKUNって。誰?

更にネットで他の車体の画像を見るとキースイッチのコネクタはこんな1本ずつギボシや平端子で接続するのではなく、3本纏めたコネクタが繋がっています。
やっぱり過去にここをイジられているみたいですね。その時に間違った配線をされた可能性があります。

「多分こうだろう」という現時点の結論

元々の配線が間違っている可能性も踏まえ、どうすれば正常に動作するかを考えた結果、キースイッチへの接続が現状とは逆に、下図の赤・青で描いた様に接続するのが正しいのだとしたら理屈が合います。
これならキーOFF時はスイッチ内で切り離されていてリークする事もないし、ONの時はCDIに12V電源及びツェナー経由の8Vも加わります。
また直結されてもツェナーを経由しないので盗難防止機能も正常です。


上記配線になる様、ギボシと平端子を繋ぎ変えてみると、キーOFF時のリークは無くなり、ON時の動作も正常となりました。

反省

ジャンク同然で買ってきたバイクの配線が正常であるという前提で考えたのが失敗でしたね。
無駄にCDIを買ってしまったけど、むしろサービスマニュアルを買うべきだったかも。

上の配線で本当に正しいのか、正規の回路図で答え合わせをしたいので回路図をお持ちの方、ぜひ教えてください。

しかしCDIとかレギュレートレクチファイヤーとか、なんだかバイクの電装系を調べるのが楽しくなってきました。。。