知り合いが自動車整備工場をやっているのですが、ECUが壊れて交換パーツが手に入らず、廃車の危機になっている車があるのでダメ元で見てくれないかと言われました。
見ても解るかどうか不明ですが、「ダメ元」で良いならと預かってみました。
※ここで言うECUとはエンジン・コントロール・ユニットの略で、車のエンジンを色々と制御する、マイコン搭載のモジュールです。
症状としては「吸気の流量を調整するバルブがあって、それを制御するモーターが上手く回らないためアイドリングが安定せずにエンストする」という事です。
話によるとモーターのコイルが短絡状態になった為にECUも故障し、交換用モーターは手に入ったけどECUが手に入らないとの事。
問題のECU
で、これがそのECU。
このECU、プラスチックケースの蓋が接着されていて、分解する前提には作られていません(まあECUなんて大体そんなもんだとは思いますが)。
という事でこちらの面は受け取った時点で強行突破されていました。
そして反対側の面。こちらは開けられていなかったのですが中を見たいのでプラスチックをノコギリで切り取りました。
調べる
これだけ見ても何が何だかさっぱりわかりませんが、整備工場ではサービス情報をダウンロードできるそうなのでECU回りの配線図を付けてもらいました。
流石にECU内部の回路図まではありませんが、どの端子がどこにつながるかという手掛かりがあると少しは進められそうです。
そして関係する部分は下図のあたり。真ん中付近のC09というのが件のモーター、図の一番下に「EPI&A/Cコントローラ」と書いてある囲みがECUです。
しかしこのモーターの配線は普通のモーターっぽくないですが、何処かで見た様な配線ですね・・・ユニポーラのステッピングモーター?
コイルの上側は12Vに接続しているので、予想通りステッピングモーターだったら下側はトランジスタ経由でGNDに落とす筈。。。たぶんこんな感じで。
そこでECUの端子番号11~14から基板の中を辿っていくとそれぞれトランジスタらしき部品につながっています。この部品には「V0 1G」とマーキングされていてネットで探しても型番まではたどり着けませんでした。しかしテスターで当たるとやはりバイポーラトランジスタの様です。なのでやはり上図通りの可能性が濃厚に・・・
このトランジスタの端子配置は下図の様になっています(テスターで当たった結果から)。
パッケージは寸法的にSOT-89,SC-62,MPT3あたりだと思います。
既に手元にないので今確認はできませんがB-E間に抵抗が入っていたと思うので秋月電子にあるRN5006が近いんじゃないかと思います。
追記:上記RN5006はC-E間耐圧が10Vなので耐圧不足でした。12Vで使うのでもう少し耐圧が必要です。
そして基板内の4つのトランジスタにはQ141~Q144のシルク表示が書いてあります。
この内Q141だけB-E間がオープン状態なので少なくともこのQ141トランジスタは壊れている様です。
修理
そこでこのトランジスタを交換すべく上記のRN5006を買おうかとも思いましたが実はもう一つ同じECUがあるのです。それが下の写真の物。。。
真っ黒コゲでしょ。中古のECUが一つだけ見つかり交換したら煙が出てこの状態になったそうです。
暫くは動作していたので車検を終えてその帰り道に煙が出たとか。ECUだけで済んだのが不幸中の幸いですね。
で、この基板内に同じトランジスタが数か所使われているので比較的被害を免れているトランジスタを取り外しました。これをテスターで当たった感触は生きている様なので、まずはこれと交換してみます。
ではコゲていない方のECUに戻り、ヒートガンで温めてQ141トランジスタを取り外し・・・
先ほど黒コゲECUから摘出したトランジスタをはんだ付けしました。
この状態で返却して試してもらいます。
結果
数日後の連絡によると正常動作したとの事で、防水処理をやり直して使ってみるそうです。
今回は出力端子に近くて比較的分かりやすい箇所でしたが、もし修理不能で交換ユニットも見つからなかったら廃車の危機ですよね。
部品を廃版にするならメーカーが中身を公開してくれたらいいんですけど(メーカー的には新車を売りたいのもわかりますが)。