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レースに使っていたフライトコントローラーにArdupilotをインストールする。

息子の大学の研究室に買ったままの状態のドローンがあり、教授からこれを飛ばす様に言われたらしいのですが、これがまた数十万円もする機体で、慣れ親しんだレース機の様に墜落上等!!なモノとは緊張感が違う様です。
この機体のフライトコントローラー(以下FC)にはPixhawk(これも10万円前後するやつ!)が載っていて、ファームウェアにはArdupilotが書き込まれています。

FCのオープンソースなファームは各種ありますが、レーシングドローンだとBetaflightがメジャーなのに対し、オートパイロット用途ではこのArdupilotPX4等が多く使われている様です。

Ardupilotを初めて知ったのはMake:日本版Vol09の記事でした。この頃はArduinoベース(なのでArdupilotという名前)でしたが最近はPixhawkが主流になっています。

で、いきなり何十万円もする機体を飛ばす前に、落ちてもダメージが少ない5インチ程度の機体を使ってArdupilotに慣れたいという希望が出てきた様です。そこで手持ちのFCにArdupilotをインストールできないか調べてみました。上手くいけば自作フライトコントローラーのHOIHOI-FCに載せられるかもしれません。(下まで読んで貰えると現状のHOIHOI-FCには載せられなかった事が分かるのですが)

何はともあれArdupilotをビルド

必ずしも手元でビルドできる必要は無いかもしれませんが、最終的にHOIHOI-FCに載せるとしたら設定を変えてビルドする必要が出てきそうです。
という事で今回もWSL(Windows Subsystem for Linux)上にビルド環境を作ってみます。
基本は下記のドキュメントに沿って作業していきました。

https://ardupilot.org/dev/docs/building-setup-windows10_new.html
https://ardupilot.org/dev/docs/building-setup-linux.html
https://github.com/ArduPilot/ardupilot/blob/master/BUILD.md

という事で、まずはWSLを開き、GithubのArdupilotリポジトリをクローンします(gitの環境は予めインストールしてあります)。
但しその前に改行コードを勝手にCRLFに変更しない設定にしておきます。「CRLFにする」設定のままで作業すると、後々エラーが出てしまったのです。

git config --global core.autocrlf false   ←勝手にCRLFに書換えない設定。
git clone --recurse-submodules https://github.com/Ardupilot/ardupilot

出来上がったardupilotディレクトリに移動して設定スクリプトを実行しました。

cd ardupilot
Tools/environment_install/install-prereqs-ubuntu.sh -y

スクリプトが.profileに加えた変更を反映させます(ログインし直しても良いですが)。

. ~/.profile

ビルド可能なボード名一覧を参照し、この中からMatekF405をビルドしてみました。
(MatekF405を選んだのはBetaflight用HOIHOI-FCをビルドした時、MatekF411を元に作成したので今回も近いボードで試したいから)

./waf list_boards    ←ビルド可能なボード一覧を見る
./waf configure --board MatekF405 
./waf copter

暫くすると”adrupilot/build/MatekF405/bin/”の下に”arducopter_with_bl.hex”ができました。
FCがMatekF405であれば、このままファイルを書き込めば良い筈です。

HOIHOI-FC用にビルドできるか?

ではHOIHOI-FC用の設定を作ろうと思います。
各FC用の設定はどうやら”ardupilot/libraries/AP_HAL_ChibiOS/hwdef”の下にFC名のディレクトリを作ってそこに置く様です。
先ほどのMatekF405だと”ardupilot/libraries/AP_HAL_ChibiOS/hwdef/MatekF405″で、この中に”hwdef-bl.dat”,”hwdef.dat”の二つのファイルがあります。
よってこのディレクトリをHOIHOI-FCディレクトリとして丸ごとコピーした後に変更を加えていこうと思います。
・・・ところがHOIHOI-FCに載せているマイコン、STM32F411はArdupilotでサポートされていない事が分かりました。
wikiによるとフラッシュメモリが1MB以上必要との事。STM32F411は512KBなのでファームが入りきらない様ですね。
ならばSTM32F722もHOIHOI-FCに載せた事があるのでこれならどうだっけ?・・こちらも512KBでサポート対象外ですね。 うーん、なんてこった。

iFLIGHT SuccexF405に載せてみる。

このまま止める訳にもいかず、手持ちの中からArdupilotがサポートしているFCを探したところ、iFLIGHTのSuccexF405がありました。このボードに載っているSTM32F405(フラッシュ容量1MB)ならOKです。

ではSuccexF405のファームをビルドして書き込んでみます。書き込み方法は“1/3三田式3型改1製作記さん”のブログ“を参考にしました。
まずFCのBOOTボタンを押しながらUSBに接続する事によりDFUモードで起動し、STM32CubeProgrammerで先ほどのファームを指定して「Download」ボタンを押すと書き込みが始まります

書込みは特に問題なく終了しました。
一旦USBケーブルを外し、今度はBOOTボタンを押さずに接続すると・・・反応ありません。
WindowsのデバイスマネージャーにCOMxとして認識されるはずなんですけどねぇ。

そこでSTM32CubeProgrammerでVerifyをやると不一致のエラーがでました。上手く書けていない様ですね。
結局、消去ページで一旦全体消去をしてから同様の書き込みをするとVerifyも一致し正常に動作する様になりました。「Download」ボタンで自動的に消去もやってくれる訳ではない様です。

以上によりMissionPlannerとも接続でき、まだ細かい所はこれからですがArdupilotとして動作し始めました。

次はGPSやコンパスを繋ぐ必要がありますね。。。

ESCを作ってみる~その4~ メロディエディターにハマる

先日のESC自作実験でbluejayファームウェアを入れた事を書きました。

bluejayにはスタートアップ時にモーターからビープ音が鳴りますが、代わりにメロディーを鳴らす機能があります。これにはESC Configurator中のMelody Editorを使う事で、PC上であれこれ試した後、納得がいった時点でESCに書き込むことができるのです。
これ、色々と鳴らしていると楽しくなってハマってしまいました。

まずやり方のメモ・・・

Bluejay ESCにスタートアップメロディを書き込む方法

まずブラウザー(Chromeでやりました)を立ち上げてESC Configuratorを開きます。
ページの真ん中より少し下あたりに「Open Melody Editor」というボタンがあり、これを押すとメロディーエディターが開きます。

下の画面がメロディーエディターです。
「bluejay:b=570,o=4,d=32:4b,p,・・・」と書かれている場所がメロディーのデーターで、立ち上げ直後はBluejay標準のビープ音が設定されています。
ここで「Play」ボタンを押すとPCからメロディーが流れます(まずはPCだけで試せるのです)。
また「Select a Melody」プルダウンにはあらかじめ色々なメロディーが収録されているので、色々切り替えて鳴らす事もできます。

で、このメロディーデータ、音楽知識ゼロなのでパッと見なんだかわかりませんが、調べるとノキアが開発したRTTTL(RingToneTextTransferLanguage)という、元は携帯電話の着メロを記述する為のものだそうです。
詳細説明はウィキペディアにありました。
→ https://en.wikipedia.org/wiki/Ring_Tone_Text_Transfer_Language

この説明をメロディーデータと見比べると何となく判ってきたので、試しに「お風呂が沸きました」のメロディーを入れてみます。ネット上に落ちていた楽譜を見ながら何とか変換したのが次のデータ。

DollsDream:b=200,o=4,d=16:8g,8f,4e,8g,8c5,4b,8g,8d5,4c5,4e5,4p,8c5,8b,4a,8f5,8d5,4c5,4b,2c5

ではこれをESCに書き込んでいきます。

PCとFCをUSBケーブルで接続し、ESCに電源を入れて・・・
ESC Configuratorの「Open Port Selection」でポート番号を選んだ後、「Connect」ボタンを押します。

下の画面が出れば接続成功なので、右下の「Read Settings」ボタンを押します。

すると下の画面に変り、諸々の設定内容が表示されています。ここで「Open Melody Editor」ボタンを押します。

すると先ほどと同じ様なメロディーエディターが開きます。
さっきと違うのは「Accept」や「Write Melodies」ボタンが増えているあたりです。

では作ったデーターをコピペして「Play」を押してみましょう。先程と同様にPCからメロディーが流れます。内容に納得がいったら「Accept」を押した後「Write Melodies」を押すとESCに書き込まれます(書込みはあっという間でした)。

あとはMelody Editorを「Close」し、ESC Configuratorの「Disconnect」を押した時点でESCが再起動するので、先ほど書き込んだメロディーが今度はモーターから流れます。

実際にESCの起動音として使うには、あまりに長いと待っていられないのでb=200の部分を調整すればよいと思います(この値はテンポなので数値を大きくすると早くなる)。

楽しくなってきたので色んな曲を入れてみました。

メロディーデーターと共に動画を掲載します(音楽は素人なので変な個所もあると思いますが・・)。

♪お風呂が沸きました
DollsDream:b=200,o=4,d=16:8g,8f,4e,8g,8c5,4b,8g,8d5,4c5,4e5,4p,8c5,8b,4a,8f5,8d5,4c5,4b,2c5

♪Jupiter
Jupiter:b=150,o=4,d=16:8f,8g#,4a#.,8c#5,8c5,8g#,8c#5,4d#5,4c#5,8c5,8a#,8c5,4a#,4g#,2f

♪ロンドンデリーの歌
Londonderry:d=4,o=4,b=150:8d,8d#,8f,4g.,8f,8g,8c5,8a#,8g,8f,8d#,4c,8d#,8g,8g#,4a#.,8c5,8a#,8g,8d#,8g,2f

♪トトロ
Totoro:b=140,o=4,d=32:8c,8d,8e,8f,8g,8p,8e,4c,4g,8f,8f,4d,.2p,8f,8p,8d,4b3,4a,8g,8g,4e.

♪まんが日本昔話
mukashi:b=140,o=4,d=16:8a,8g, 2a,16g.,32p,16g.,32p,16f.,32p,16f.,32p,16g.,32p,16g.,32p,16g.,32p,8f,2g

♪威風堂々Elger:b=150,o=4,d=16:2c5,8b,8c5,4d5,2a,2g,2f,8e,8f,4g,2d,4d.,8p,2e,8f#,4g,8a,2d5,2g,2c5,8c5,4b,8a,2g,4g.,8p

♪未来少年コナンConan:b=150,o=4,d=16:16e.,32p,16e.,32p,16d.,32p,8c,8c,8c,8e,4a,4g,2p,16f.,32p,16f.,32p,16f.,32p,8e,8d,8d,8d,8f,4b,4a,8p

で、ESC製作計画の方ですが・・・

4in1ESCを作ってみようと悪あがきしていますが、やっぱり格安の両面プリント基板では厳しいです。
4層基板じゃないと無理かなぁ。できれば銅箔も分厚くしたいし。でも値段が一気に上がるんですよね。。。

配線がぐちゃぐちゃになる。。。脳みそ沸騰中。

MP9943GQ 同期整流式ダウンコンバータ ~その2~

昨日の投稿で最終的に下の様な波形になった事を書きましたが、やはり納得いかないのです。
出力にスパイク状のノイズが見えるのはプローブの当たり方の問題ですが、正弦波っぽく揺れるリプルが大きすぎます。また、そもそもSW出力が一定の周期でないのも変ですよね。

CH1:(黄)がMP9943GQのSW出力。CH2:(青)がインダクタを通った後の最終的な出力。

SWのプローブは取り外し、出力だけを20mVレンジで拡大するとこんな感じで振幅400mV程度で揺れています。

改めてMP9943GQのデーターシートを見ると下の様な波形が載っていました。
出力が3.3Vだったり負荷電流が3Aだったりで自分のとは条件が違いますが、リプルは10mV以下の振幅に収まっているしSW出力も一定周期で変化しています。自分のはやっぱりおかしいですよね。

もう一度回路図を眺めながら・・・

ここでMP9943GQのFB端子にどんな電圧が入っているかを見ようとしてプローブを当てると出力リプルの振幅が20mV程度に減ってしまいました。FB端子からプローブを離すとまた400mVに増えます。

どうやらFB端子回りの問題っぽいです。
苦し紛れにFB端子とGND端子の間に12pFのコンデンサをつけると振幅20mV程度に収まりましたが、あまり対処療法的なのは嫌ですよね。

何が原因でしょうか?
5V出力に設定する為、R7,R8を68K/12Kに設定していますがデーターシートの推奨値は41.2K/7.68Kです。
まあこんな値の抵抗は持ってないし、あまり影響なさそうとは思いつつ39K/6.8Kに変更しましたが、予想通り変化なしでした。

フィードバックの経路にスイッチングノイズが載るんでしょうか?
次にR7,R8の分割抵抗をチップに近づける様、図の場所に移動すると・・・

納まりました!

よく見るとデーターシートにもFB端子回りの抵抗はできるだけチップの近くに取り付けろと書いてありましたね。

5) Place the T-type feedback resistor close to chip to ensure the trace which connects to FB pin as the short as possible.

拡大しても振幅10mV程度になっています。

SW出力もちゃんと一定周期な波形になっているし・・・

たぶん、今度はちゃんと動作していると思います。

MP9943GQ 同期整流式ダウンコンバータ

いきさつ

MP9943GQモノリシックパワー社のDC-DC スイッチングダウンコンバータ用ICで、最近のドローン用フライトコントローラーのBEC回路にはこのICがよく積まれています。
ほいほい堂本舗ではこれまでスイッチングコンバーター用ICMP2359DJ,MP1584ENを試してきましたが、今回MP9943GQも試してみます。なぜこのICを試したいかというと同期整流回路が内蔵されているのです。

同期整流回路はコンバーターの効率UPを目的として使われる事が多いのですが、フライトコントローラーにとってはそれよりもダイオードを省略できるので基板面積を節約できて嬉しいのです。

以前製作したHOIHOIフライトコントローラRev2にはMP1584ENを使った下の様な回路を載せていました。

MP1584ENの内部にはINとSWの間にスイッチング用MOS-FETが入っています。コイツがONの時はVBATからインダクタL1に電流を供給し、OFFの時はインダクタL1に貯めたエネルギーがダイオードD2を通して流れます。なのでD2には結構電流容量の大きなダイオードが必要なのです。
一方、同期整流の場合、外付けダイオードに代わってIC内にもう一つのMOS-FETが入っており、内部でタイミングを合わせてON/OFFしてくれるのです。

上述のHOIHOI-FC Rev2では写真の様な容量2Aのショットキーダイオードを載せていました。MP1584ENの規格上は3Aの能力がありますが、ダイオードが大きくなるので2Aタイプで済ませています。MP9943GQになるとこのダイオードが不要なのに加え、IC自体のパッケージサイズも3mm×3mmとコンパクトになっており、この点でも面積が節約できます

試してみる

という事でMP9943GQを動作させる実験を行います。
例によってジャンクのFC基板からICとインダクタ(10μH)を取り出しました。
(データーシートによるとAMGMとマーキングしてある内、AMGがMP9943GQを示すそうです。
最後のMはyearコードとなっていますがMは何年を示すのでしょうね?)

Ki-Cadで回路を書いて・・・

基板のパターンも書きます。今回基板は切削するので広めに部品を配置して・・・。

それでもこのまま我が家のCNCで加工するのは精度的に厳しいので一旦加工データーをDXFで保存し、jw-cadに読み込んで切削しやすい様に修正しました。

作った基板がこれ。
(配線間にサンハヤトのソルダーレジスト補修液を塗っていますがハンダを載せたい部分にも付着してイマイチなので後で除去しました)

そして一通り部品を載せたところ。。。

なおベタパターンを設けたかったので両面基板にしています。
裏面はこんな感じ。。。

実は片面基板を2枚張り合わせたナンチャッテ両面基板です。

動作させてみる

3mmx3mmのQFNを切削基板にハンダ付けするのに苦労し、何度か加熱し直してようやく動作しました。

5Vの出力端子に負荷として5Ω抵抗を接続したときの波形です。CH1(黄)がICのSW出力。CH2(青)が最終的なDCDC出力。
DCDC出力にスイッチングノイズが載っている様にみえますが、これはプローブの当たり方の影響で、この時はプローブのワニグチクリップでGNDを取っていました。

DCDC出力のみにして200mV/Divに拡大。
このプローブの取り方だとスパイク状のノイズが振幅800mV程度で出ている様に見えます。

そこでプローブの取り方を下の写真の様に最短にしてみます。
(写真右上に見えている白いカタマリは5Ωのセメント抵抗)

すると・・・

スパイク状のノイズはかなり納まりましたね。
でも振幅数十mVでグニャと揺れているのでSW端子と重ねてみると・・・

スイッチング周期と同期している様です。
因みに無負荷だと綺麗に収まっています。


どうでしょう?まあこんなものなんでしょうかね?

ESCを作ってみる~その3~

ESC自作実験の続きです。

回路

何はともあれ目標とする回路図を書いてみました。動作させてみてマズいところは修正していきます。

マイコンのマニュアルはSiLabsの公式ページからダウンロードしました。
 https://www.silabs.com/documents/public/reference-manuals/efm8bb2-rm.pdf
ドライバのマニュアルは良く分からないところからダウンロードしました。
 https://static.qingshow.net/fortiortech/file/1597746029372.pdf

回路をざっと説明すると次の通りです。

  • 制御用マイコン
    SiLabsのEFM8BB21F16G。この中のBLHeli_Sファームウェアが全体を制御します。
  • 出力パワーMOS-FET
    モーターのコイルに電流を流す為のNch MOS-FETで、手持ちの2SK2232を使用します。
    全てはこの6個のMOS-FETを狙い通りにON/OFFする事がESCの目的となります。
  • FET駆動用ゲートドライバ
    FORTIORのFD6288Q。パワーMOSのゲート駆動用ICです。ゲート駆動するのもそれなりのパワーがいるので電圧及び電流容量アップ、またH/L同時ONの防止等を行います。
  • ブートストラップ回路
    NchのパワーMOSを駆動するにはソース端子よりも10V程度高い電圧が必要です。H側FETがONしている時、ソースとドレインはほぼ同電位なので、結局電源よりも高い電圧が必要です。
    そこでL出力期間にコンデンサにチャージしておき、H出力期間に電源以上の電圧を取り出します。
  • 電気角検出回路
    ブラシレスモーターをセンサー(ホール素子等)を使わずに回すには、現在の回転角を検出する必要があります。このためコイル電圧を抵抗分割してマイコン内臓のコンパレーターで検出します。

ゲートドライバICにはパワーMOSと同じ電源電圧を入れているので2~4セル程度の電圧なら回せると思いますが、2SK2232のゲート・ソース間電圧が最大20Vなので6セルで回すとFETが壊れるかもしれません。
なお部品摘出元の市販ESCでは12Vのレギュレータを挟んでゲートドライバに入れてありました。

製作

で、作ったのがこれ。
パワーMOSは手元にあった2SK2232を6個使用しています。
マイコンとゲートドライバは先日作った基板に載せて、それをブレッドボードに挿しています。
モーターは軸が曲がったジャンク品を接続。
黄色いUSBケーブルを挿しているのはHOIHOI-FC Rev1。既にRev2があるので実機には載せないけど諸々の実験には便利に使っています(なにせ内部の回路が全て判っているので)。ここからDshot信号を発生させるのです。

動作

配線をミスってたりQFNのハンダ付けが上手くいってなかったりしましたが、何とか動作しました。
動作中の動画・・・

Bluejayを入れてみる

マイコンにSiLabs EFM8BB2を使ったESCではBluejayというファームウェアをインストールできます。(Bluejayの存在は最近知ったのですけど・・・)
BluejayはRPMtelemtryが使える等の機能強化がなされているのです。
インストールするにはブラウザから下記のサイトを開くとコンフィグレータが立上がります。
https://esc-configurator.com/
(Chromeで実行しました。ほかのブラウザは試していません。
スタンドアロン版もある様ですがメンテしないので非推奨と書かれていました。ドローンの場合ネットが繋がらない環境で使う事も多いので、その場合どうなんでしょうね?)

実行結果が下の画面です。BLHeliSuite同様、FC経由でConnectしてファームを書き換えました。
更にメロディーエディター機能もあるのでスタートアップのビープ音も変更してみました。

Bluejayに書換後、モーターが回らないので焦りましたが、原因はFCのプロトコル設定がPWMになっていました。BluejayはPWMのサポートは無くDshot専用なんですね。

Dshotに変更し、更にRPMtelemetryをONにした動画。BetaflightConfiguratorに回転数が表示されています。

という事で・・・

バラック状態ですがESCを作れる事が分かってきました。
この先ですが、最終的にはFCとESCを纏めて巷で言うAIO(All In One)基板を作るという野望があります。でもこれはかなり大変そうですね。Ki-cad上で基板設計は出来たとしてもチップ抵抗もこれまでより細かいサイズにする必要があるでしょうし、部品点数も多いので手作業での実装はたぶん無理。また基板も4層以上になるでしょうから値段も上がるし・・・
まずは4in1ESCを作るところからかな?

つづく・・・

ESCを作ってみる~その2~

大晦日に基板が到着したので作業を続行します。

前回の投稿にジャンクESCからマイコン(EFM8BB21F16G)とドライバIC(FD6288Q)を摘出した事を書きました。これらのICを基板に載せ、ブレッドボード上であれこれ実験する予定です。

基板に搭載

今回はメタルマスクを作らなかったのでコピー用紙をレーザーカットしてクリームハンダを塗ります。

部品を載せて・・・

リフローしました。

チップ内蔵クロックを使用するので発振子も不要ですし、この後ピンヘッダと電源のコンデンサだけを取り付けました。

マイコンの動作確認

ではEFM8BB2マイコンのGNDとP05端子にフライトコントローラー(以下FC)を接続し、3.3Vの電源を入れます。
この状態でBLHeliSuiteを起動すると設定内容を読出せたので、マイコンは生きていますね(ジャンクから取出したので一応確認)。

次はマイコンに何か書き込んでみたいのですが、公式の書込み機(Toolstick)は持っていません。
調べたところEFM8BBxマイコンにプログラムを書き込むにはざっと以下の方法がある様です。

  • C2インターフェース経由での書込み。
    公式の書き込み機(Toolstick)はこのC2インターフェースに接続する様です。
  • ファクトリーブートローダー
    新品状態ではこのブートローダーが書かれていてUARTから書ける様ですが、今回ESCから摘出したマイコンには下記のBLHeliブートローダーが上書きされているので、この方法は使えません。
  • BLHeliブートローダー
    ESCを購入した時点でファームウェアと共に書かれているブートローダーで、FCからの信号端子をそのまま使ってファームを書き換える事ができます。
    普段FC経由でファームをアップデートする時はこのブートローダーが動作しています。

という事でまずはBLHeliブートローダーからのファーム書換えをやってみます。
と言っても普段やっている通りで、FCを接続すると問題なく書換えができました。

しかし将来的に新品マイコンを買ってきた場合にはこの方法は使えないのでC2インターフェース経由でも読書き可能な事を確認したいですね。公式のマニュアルによると開発ツールのSimplicityStudioから書込み機(Toolstick)を使って接続する様ですが、上記の通りToolstickは持っていません。

そこで見つけたのはPCでBLHeliSuiteを立上げておいてArduino経由でC2インターフェースに接続する方法。 この方法ならBLHeliのファームを壊して文鎮化した場合でも書き直せる様です。

BLHeliSuiteからArduino経由C2-I/Fでファームを書いてみる。

ざっと流れを言うと、BLHeliSuiteを起動し、まずArduinoにファームを書込むことでArduinoがC2インターフェースでの書込み機に変身します。(この時ArduinoIDE等は使わず、BLHeliSuiteから直接書くことができます。)
その後Arduinoとマイコンを接続してマイコンにファームを書込む流れとなります。

ではまずPC上でBLHeliSuiteを実行し、「Make interfaces」タブをクリックすると下の様な画面になりました。

次にPCのUSBポートにArduino(今回NANOを使用)を接続しておき、画面右のボード選択でArduinoNANOを選択、画面最下部でCOMポート番号を選んだら右下の「Arduino 4way-interface」をクリックします。

ここで3つのファームから1つを選ぶ画面が現れたので4wArduinoNano_16_PB3PB4v20002.hexを選択しました。
(ここでPB3PB4とかPD3PD2というのはArduinoのどの端子をC2インターフェースに接続するかの違いだと思います。MULTIというのは良く分かりませんが複数のESCを接続できるんでしょうね?)

あとは「開く」とか「OK」(だったかな?)とかを適当に押すとArduinoにファームが書き込まれます。
これでArduinoが書込み機となりました。

次にArduinoとEFM8BB2マイコンの間を接続して電源を入れます。接続は下の3本です。

 <Arduino>     <EFM8BB2>
 PB3又はD11 ⇔  C2CK
 PB4又はD12 ⇔  C2D
 GND        ⇔  GND

BLHelisuiteのメニュー「Select ATMEL/SiLABS Interface」から、B SiLABS C2(4way-if)を選択します。

あとは普段通り。「Connect」→「Flash BLHeli」とボタンを押してファームを選択すると書込みができました。

Lチカプログラムを書いてみる。

上記の方法で当面の目的は叶えられました。でも折角なので前回ビルドしたLチカサンプルプログラムを書込んでみようと思います・・・が、BLHelisuiteでLチカプログラムを書こうとするとエラーが出てきました。「変なものを書いているよ」という警告ですがキャンセルボタンしか無いです。
どうやらなんでも書き込めるわけではない様ですね。

そこで更に調べていくとow-Silprogというのを発見しました。こちらもBLHelisuiteと同じ様にArduino経由で読み書きするツールです(どうやらBLHelisuiteのC2接続機能のベースになったツールっぽい)。
こちらはAvrBurnToor_V101.exeを使ってArduinoにファームを書込みますが、そこからC2インターフェースに接続するので基本的にやっている事は同じです(但しArduinoに書いたファームはBLHelisuiteとは互換性はない様でした)。
このサイトの説明によるとWindows上で動くGUIツールを使った読み書きもできる様ですが、このツールの存在場所を見つけられませんでした。が、コマンドラインから使う為の命令一覧が載っているので、こちらは実行できました。
この方法でマイコンFLASH内のアドレスを指定して内容を読出す事ができます。実はジャンクから摘出したマイコンではファクトリーブートローダーは上書きされていると先ほど書いたのはこれで読んだ結果からです。

で、bwというコマンドではインテルHEX形式を指定して書込めるという事なので、下の様に1行ずつ書き込んでいきました(Lチカプログラムは10行もないのでコピペで実施した)。

これでLチカも動作していますね。
ならばファクトリーブートローダーを書き戻す事も出来そうですがキリが無いので一旦止めて、本来の目的であるESCを動かす事を先に進めたいと思います。

つづく・・・

ESCを作ってみる~その1~

前からやってみたかったESCの製作をしてみました。
以前FCを作ったので、加えてESCも作れるとドローンの主要パーツが揃う事になります。(あ、モーターは別ですね)

※略語の確認
 FC :フライトコントローラー
     マイコン基板にセンサーが載ったやつ。ドローンを制御する。
 ESC:エレクトリック・スピード・コントローラー
     ブラシレスモーターを回すドライバ。

ドローン系ESCの種類

今回もESCのファームウェアを1から作るような根性はないのでオープンソースの優秀なファームを使う予定です。
レース系ドローンでよく使われるESC用ファームにはBLHeliというのがあり、更にBLHeli内の分類、その他最近登場したファームも含めて整理してみました。

  • BLHeli
    AtmelやSiLabsのマイコンが対象ですがちょっと古いタイプでレースではあまり使われません。
  • BLHeli_S
    マニュアルによるとBLHeliのnext generationという事です。_Sが何を意味するのかは判りません。SiLabs製マイコンのみ対象でAtmelは対象外みたいですね。
  • BLHeli_32
    STM32マイコンを使った32bit版です。
    RPM telemetry(回転数をFCに送信する機能)がありFC側でRPMフィルターという高度な処理ができるのですが、上の二つと違ってソースが公開されてないっぽいです。
  • bluejay
    これ最近知ったのですがBLHeli_Sの派生版で、SiLabsのマイコンが対象ですがRPM telemetryが使えます。
  • AM32
    これも先ほど知ったのですがSTM32を使ったオープンソースのファームウェアらしいです。

今回製作するESCはBLHeli_Sを対象にします。そして上手くいけば後にbluejayも試そうと思っています。

SiLabs製マイコンについて

という事でSiLabsのマイコンを使う事になりますが、このメーカーって馴染みが無いので調べてみました。
BLHeli_SでサポートしているのはEFM8BBxという8bitマイコンで、このCPUコアはインテル8051の命令セットとコンパチです。8051って随分昔に使った事があり懐かしいですね。たしか8080に周辺回路をつけてワンチップマイコン化した様なやつだったと思います。でもEFM8BBxは処理速度が大幅に向上しているそうです。
ところでBLHeli_Sのソースはアセンブラで書かれているんですね。80のアセンブラなんてすっかり忘れたなー。

BLHeli_Sのビルド

EFM8BBxの開発環境はSimplicity StudioというのがSiLabsのサイトからダウンロードできます。
そこで絶対必要というわけではない(ビルド済HEXファイルをダウンロードすればよいので)ですがBLHeli_Sをビルドしてみたいと思います。
Simplicity StudioにはWindows上で動くGUIな開発環境が付属していますがBLHeli_Sのビルドはコマンドラインからバッチファイルを実行します。
で、実行してみたところC8051開発ツールが評価版なのでサイズの制限でビルドできないっぽいメッセージが出ました。えー、お金いるの? どうやら内部で使っているKeliというコンパイラ/アセンブラのライセンスをARMから買うっぽいですね。
まぁBLHeli_Sのビルドは絶対ではないので一旦置いといて付属のサンプルからLチカプログラムを実行したところ、やはり同じメッセージが出て止まりました。
でもSimplicity Studioを使うならKeliのラインセンスは無料でもらえっぽいメッセージが出ているので表示に従ってラインセンスをもらうとビルドできてしまいました。
という事はBLHeli_Sもビルドできる様になったのかな・・・もう一度バッチを実行してみると確かにこちらも最後まで進み、無事HEXファイルが出来ていました。

ハードウェアの準備

何はともあれ実行してみる為のハードウェアが必要です。
EFM8BBxの評価ボードを調べると市販はされていますが5000円以上します。でもよく考えるとこのマイコンは沢山持っていますよね。
こんな感じで・・・

ジャンクのESC群。ここから摘出すればよいのです。ついでにパワーMOS FETをドライブするドライバIC(FORTIOR FD6288Q)も摘出できます。
なおドライバICのFD6288QはH側にN-MOSを使う場合に必要な電源電圧より数V高い電圧を発生してくれたり、H側とL側が同時にONして貫通電流でFETを壊す事故を回避してくれます。

という事で摘出しました。
・マイコン:EFM8BB21F16G x3個
・ドライバ:FD6288Q x3個

マイコンとドライバ、どちらも0.5mmピッチのQFNパッケージなのでそのままでは配線し辛く、引き出し基板が必要です。Ki-Cadで描いてFutionPCBに発注しました(送料込みで$16.4)。

引き出し基板が届いたら色々試していきたいと思います。

つづく・・・

フライトコントローラーを自作してみる。~その19~ F7マイコン購入

コロナ禍による半導体不足で長らく手に入らなかったSTM32F722マイコン、最近Aliexpressを見たらマトモな値段で売られているのを見つけ、2個注文したのが届きました。
1個1297円×2個。

自作FCの中に壊したのが1枚あって、どうもマイコンが壊れているっぽいのでこれに交換しようと思います。
でも最近、ちょっと忙しいのでもう少し先。。。


フライトコントローラー自作関連の投稿一覧

フライトコントローラーを自作してみる。
フライトコントローラーを自作してみる。~その2~
フライトコントローラーを自作してみる。~その3~
フライトコントローラーを自作してみる。~その4~
フライトコントローラーを自作してみる。~その5~
フライトコントローラーを自作してみる。~その6~
フライトコントローラーを自作してみる。~その7~ リフロー炉
フライトコントローラーを自作してみる。~その8~
フライトコントローラーを自作してみる。~その9~ 動作確認
フライトコントローラーを自作してみる。~その10~ FPVで飛ばす。
フライトコントローラーを自作してみる。~その11~ Rev2基板
フライトコントローラーを自作してみる。~その12~ Rev2基板組み立て
フライトコントローラーを自作してみる。~その13~ Rev2基板動作確認
フライトコントローラーを自作してみる。~その14~ マイコンパワーアップ検討
フライトコントローラーを自作してみる。~その15~ 基板データ公開
フライトコントローラーを自作してみる。~その16~ JDLで飛ばす。
フライトコントローラーを自作してみる。~その17~ F7マイコンを載せる。
フライトコントローラーを自作してみる。~その18~ またまたF7
フライトコントローラーを自作してみる。~その19~ F7マイコン購入



HOILog・・無人航空機飛行日誌を自動化 その2

先日報告したHOILogですが、飛行練習会で使ってみると幾つか問題点が見えてきました。

WTW熊本の練習会で試している風景。
(Tinyなので本来ログはいらないですが)

一番問題なのはGoogleドライブにアップロードする時にリトライが発生した場合。自宅の無線環境だとリトライする事はほぼありませんが、スマホのテザリング経由だと(電波状況にもよると思うけど)頻繁にリトライが発生し、リトライしていてもGoogleドライブには届いている事も多く、複数回のログがアップロードされてしまいます。
Googleドライブ側はこちらの仕組みを使っていますが仕組み的にリトライが発生するとそのまま全部が残ってしまいます。リトライになること自体はネットの都合なので対応が厳しく、きちんと対策するにはGoogleドライブ上のスクリプトを変更していく必要があると思います。

一方SDカードには安定してログが残るので、当面はこっちを主に使いたいと思います。。。が、これまでSDカードには時刻ぐらいしか記録していなかったので、今回機体名や場所を残す様に変更しました。

SDカードに残すログのフォーマット:
右から時刻、飛行場所、機体名、離陸か着陸か、アップロードしたか、その場合のリトライ回数 を示します。

例:

2023-03-19 22:34:15,KUMAMOTO,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-19 22:34:25,KUMAMOTO,Mobula6,Landing,Upload success,1
2023-03-19 22:34:36,KUMAMOTO,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-19 22:34:45,KUMAMOTO,Mobula6,Landing,Upload success,1

あとコンフィグファイルのデータ中にスペース文字があった場合にスペースを消してしまっていたのを修正しました。
試しに飛行場所にスペースを1文字入れ「KUMA MOTO」にしてみたのが以下の結果です。。。

2023-03-21 23:58:14,KUMA MOTO,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-21 23:58:23,KUMA MOTO,Mobula6,Landing,Upload success,1

ついでに飛行場所に日本語を使うとどうなるか実験しました。
飛行場所を日本語(文字コード:UTF-8)で書いたところ、液晶画面には正常に表示できませんがSDカードとGoogleドライブ、どちらのログにも正しく記録されています。

2023-03-19 22:38:15,熊本県合志市,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-19 22:38:30,熊本県合志市,Mobula6,Landing,Upload success,1

なおM5Stackには液晶画面に日本語を表示させる方法もある様なので、そのうち試そうと思います。

以上を修正したスケッチをここに載せました。
http://www.hoihoido.com/data/HOILog20230323.zip

HOILog・・無人航空機の飛行日誌を自動化

最近M5Stackにハマっていました。
M5Stackというのはまあ簡単に言うとESP32マイコンにLCDディスプレイやバッテリーを含んだ電源管理回路などをつけて一式をケースに入れたものです。
私が購入したのはCore2という機種で外観はこんな感じ・・・

M5Stackは数年前から出ていて気にはなっていたのですが、値段がちょっとお高めだったりして手を付けていませんでした。で、今更ながら購入してみたら結構便利なんですよね。 特に電源管理回路とかイチから作るとそれだけで何かにハマりそうですが、これなら最初から入っています。

HOILog

という事で何を作っていたかというと「無人航空機の飛行日誌を自動でとるシカケ」です。命名:HOILog。
M5Stack Core2を選んだのは内部に時計(RTC)を持っているので時刻を記録し易いのです。

構造は ざっと下の通り・・・

RC受信機が信号を受けるとSBUSやCRSFプロトコルでM5Stackに伝えます。
(SBUSはフタバ系、CRSFはELRS等で使われるプロトコルです。両方対応しています。)
M5Stack側では信号が来たら飛行開始と判断し、マイクロSDカードに時刻を記録します。そして信号が途絶えたら飛行終了ということでまた記録します。

更にM5StackにはWiFi接続機能があります。これを利用してWiFiが利用できる環境であればASAKICHI先生作の飛行日誌システム( 詳細 はこちら) にもアップロードできるので、Googoleドライブ上のスプレッドシートに記録が残っていきます。

動作しているところはこんな感じ→Twitterに上げた動画

ハードウェア

M5Stack Core2の裏にピンソケットがあります。新品の状態ではここにフタを兼ねた気圧センサー基板がついていますが、今回は不要なので取り外して+5V電源、GND、UART2のRX/TXを引き出し、RC受信機に接続します。
ELRS受信器には入力(RX)信号があり、現在は使っていませんが将来何かに使うかもしれないので繋いでおきます。SBUS受信機の場合は入力信号がないのでM5StackのG14(UART2-TX)端子はオープンにしておきます。

ブレッドボード上に組んだセット(回路図にはないですが分かりやすい様に電源にLEDをつけています)。

ソフトウェア

M5StackはULFlow、ArduinoIDE、Micropython等の開発環境が選択できます。私はこの中から一番なじみのあるArduinoIDEを使用しました。
ところがやり始めて気づいたんですけど、コンパイルが結構遅いんです。ググってみると皆さん同じ問題により、PlatformIOに乗り換えられている様です。PlatformIOとはVisualStudioCode(以後VSCode) に入れるプラグインで、たぶん一言で言い表すと各種マイコンに対応した開発環境だと思います。
確かにPlatformIOでビルドするとかなり早くなり快適です。またベースがVSCodeなので入力補完があったり、キーバインディングをEmacs風に変更したりできて便利です。(余談ですがEmacs風キーバインディングにしたとき、VSCodeの仕様によりEscキーを使用できず、代りにAltキーを使う事になるのが弱点です)。

ところがPlatformIOで作ったスケッチが大体安定した動作になった頃、このブログで公開しようかなーと思い、その前に一旦ArduinoIDEに戻してビルドしたところ何だかうまく動作しません。(M5Core2ライブラリはどちらも同じバージョン(0.1.5)なのですが、もっと奥の方のライブラリのバージョン違いが原因かもしれません。)

とりあえずハマったのは下記の2点。
・タイマーの一旦停止後再起動する場合の動作の違い。
 timerStop(timerxx)で停止した後に再起動するとき、 PlatformIOはtimerRestart(timerxx) で再起動できていたのがArduinoIDEだと止まったまま。
 →対策:timerAlarmDisable(timerXX)で止めて timerAlarmEnable(timerXX) で復帰させる。ただし復帰直後のカウントアップが嫌だったので timerAlarmEnable(timerXX) 直前にtimerRestart(timerxx) も実行した。

・HTTPにPOSTした後同じオブジェクトでGETできない問題。
 Googleドライブへアップロードするとリダイレクト指定が返ってきます。このため一旦POSTでアクセスした後、今度はGETでアクセスするという2段階のアクセスが必要となります。そこでPlatformIO上では、HTTPClient http;で作ったオブジェクトを使いまわして接続していました。しかしArduinoIDEだとエラー(エラーコード400が返る)となりました。
色々試したところ、どうやらArduinoIDE上では GET→GETなら できますがPOST→GETはダメでした。
 → 対策: HTTPClient http2; の様にもう一つオブジェクトを宣言し、POSTはhttpオブジェクト、GETはhttp2オブジェクトで使い分けた。

使い方~セットアップ編~

  1. ArduinoIDEとM5Stack Core2の開発環境を準備する。私はこちらのページを参考にしました。
  2. この投稿の一番下からM5Stack Core2用のスケッチをダウンロードして解凍する。
  3. PCとM5Stack Core2の間をUSBケーブルで接続する。
  4. 「2.」で解凍したフォルダ内のHOILog.inoをダブルクリックするとArduinoIDEが開く。
  5. ArduinoIDEのツールメニュー→ボード名を”M5Stack-Core2″、シリアルポートを該当するポート名(不明な場合はWindowsであればデバイスマネージャーで調べる)に設定する。
  6. 書込みボタンを押して書き込む(若干時間が掛かります)。書き込みが完了したら電源ボタンを長押し(約6秒)して一旦電源を切る。
  7. 上の「ハードウェア」に書いた様にM5StackとRC受信機を接続する。
  8. 設定ファイル”hoilogini.txt”を作成して マイクロSDカードのトップディレクトリに置く。※SDカードの使用は必須です。
  9. 電源ボタンを押して起動!!

設定ファイルについて

SDカードのトップディレクトリに”hoihoiini.txt”の名前で作成します。
内容は1行に1パラメータを設定。1行は256バイトまで。行先頭にディレクティブ、その後1文字以上の空白を置いて設定値を書きます。#記号より右側はコメントです。

設定ファイルの例・・・

# HOILog 設定ファイル 

LOGFILE /hoilog.txt # File name
SCREEN 60 # Screen save time.(Seconds)
RCTYPE SBUS # SBUS or CRSF
RCJUDGE RSSI # RSSI or RCSIGNAL
RCRSSICH 16 # Channel number
RCRSSITH 1000 # Threshold value
RCCONTTIME 3 # Signal continue time
BAUDRATE 100000 # SBUS:100000 CRSF:420000
WIFITIMEOUT 20
SSID XXXXXXXX
PSWD XXXXXXXXX
LOGURL https://script.google.com/macros/s/XXXXX/exec
LOC1 ASO
LOC2 AMAKUSA
LOC3 KOSHI
MODEL1 Tyro99
MODEL2 Switch
MODEL3 Five33

各ディレクティブの説明:

LOGFILE:SDカードに残すログファイルの名前です。
SCREEN:指定の秒数イベントがないと画面を暗くします。ボタンを押したりRC信号が変化すると表示を再開します。値が0の場合は常に表示です。
RCTYPE:RC受信機の信号フォーマットがSBUSかCRSFかの指定です。
RCJUDGE:飛行中の判定をRC信号の有無で判定するか、RSSIで判定するかの指定です。受信機によっては電波が途絶えても最後の状態を維持するので単に信号が途絶えたかどうかでは判別できません。その場合でもRSSI(信号強度)がどこかのチャンネルに出ていればこれを基に判別可能です。
RSSICH:RSSI によって飛行中である事を判定をする場合、RCチャンネルの何番がRSSIを示すかを指定します。
RSSITH:RSSI によって飛行中である事を判定をする場合、 RSSICHで示すRCチャンネルの値が幾つ以上なら信号ありとするかを指定します。CRSFの信号範囲が172~1811、SBUSも大体その程度なので1000あたりを入れておけば大体OKだと思います。
RCCONTTIME:瞬間的な信号の切断やノイズによる入感を除去するため、
(立上り/下り共) 信号が何秒間連続で続いたら変化したと判断するかを指定します。
BAUDRATE:RC信号のボーレートを指定します。SBUSは100000固定。CRSFは420000がよく使われる値です(115200も使われる様ですが手元に確認する環境がなく、動作を確認していません)。
WIFITIMEOUT:WiFi接続時、何秒以内に接続できなかったらあきらめるかを指定します。
SSID:WiFi接続のSSIDを指定します。
PSWD:WiFi接続のパスワードを指定します。
LOGURL:Googleドライブにアップロードする為のGoogleApplicationScriptへのURLです。こちらのASAKICHI先生の動画の8分20秒頃に説明があるURLです。
LOC1~5:飛行場所を5つまで設定できます。M5Stack上のメニューでこの中から一つを選択してログに残せます。電源投入直後はLOC1が選択されています。MODEL1~5:機体名を5つまで設定できます。 M5Stack上のメニューでこの中から一つを選択してログに残せます。 電源投入直後はMODEL1が選択されています。

※LOCxやMODELxの値に日本語等の2バイト文字を入れるとどうなるかは試していません。

使い方~操作編~

電源を入れるとまずWiFiに接続した後、下の基本画面になります。
WiFiに接続できなかった場合はSDカードへの記録のみ行い、Googleドライブへのアップロードはしません。
この状態でRC電波を受けるとRCCONTTIMEに設定した値の秒数信号が続く事を確認後、SDカード、およびGoogleドライブのログに記録を残します。
Googleドライブへ記録する間、飛行状態表示部に「START UPLOAD」又は「STOP UPLOAD」と表示し、この間RC信号モニタや時計は動作しません。
Googleドライブへの記録は失敗すると3回までリトライします。最終的に成功したか失敗したかはSDカードに記録します。なお稀にですがサーバが正常に受付けて成功した旨の通知を返したのにM5Stackまで届かなかった時はリトライするので複数回の記録が上がってしまいます。その場合はSDカードのログを参照しながら手動でGoogleドライブ上のデータを修正する必要があります。

M5StackのCore2にはボタンがA,B,Cの3つ搭載されています(このボタンは物理的な接点ではなくタッチセンサーになっていて、押した感触が伝わりにくいですがちゃんとボタンとして機能します)。
基本画面ではボタンCを長押しすると設定画面に移ります。
ボタンA,Bには機能を割り当てていませんが、スクリーンセーバーからの復帰には反応します。

設定画面(MAIN MENU)
上から時計設定、電源OFF、機体選択、飛行場所選択、メニュー終了です。
反転文字になっているところが現在対象となっている行で、ボタンAを押すと上、Bを押すと下の行に移動し、Cを押すと選択されます。
「電源OFF」を選択するとシステムの電源を切ります。「EXIT MENU」を選択すると基本画面に戻ります。
時計設定、機体選択、飛行場所選択の各画面を以下で説明します。

時刻設定画面
ボタンA,Bを押すと反転文字になっている部分の値が上下に変化します。ボタンCは決定ボタンで次の値に進みます。年月日~秒まで進み、次にボタンCを押すと図に「NEXT」と表示された部分に移ります。ここではボタンA,Bを押すと「NEXT」、「SAVE&EXIT」、「EXIT:NonSAVE」と順に変化して行きます。それぞれの状態でボタンCを押すと以下の動作をします。
・NEXT:最初の「年」の設定に戻ります。
・EXIT:NonSAVE:時刻は変更せずにメインメニューに戻ります。
・SAVE&EXIT:内臓時計に設定時刻をセットし、メインメニューに戻ります。

機体選択
ボタンA,Bで対象行を上下させ、ボタンCで選択すると機体が選択されてメインメニューに戻ります。

飛行場所選択
ボタンA,Bで対象行を上下させ、ボタンCで選択すると飛行場所が選択されてメインメニューに戻ります。

ログ

実行後はSDカードのLOGFILEで指定したファイル名に以下の様なログが残っています。

TakeOff,2023-03-05 22:46:36                  ←離陸時刻
Upload success,2023-03-05 22:46:36 ←離陸をGoogleドライブにアップロード成功
Landing,2023-03-05 22:47:13 ←着陸時刻時刻
Upload success,2023-03-05 22:47:13 ←着陸ををGoogleドライブにアップロード成功

Googleドライブ上には(アップロードしていれば)次の様なログが残ります。

スケッチ

HOILog20230306.zip

※このソフトウェアを使用されてもし問題が発生しても責任は持てませんのでそのあたりはよろしくお願いします。