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HOILog・・無人航空機飛行日誌を自動化 その2

先日報告したHOILogですが、飛行練習会で使ってみると幾つか問題点が見えてきました。

WTW熊本の練習会で試している風景。
(Tinyなので本来ログはいらないですが)

一番問題なのはGoogleドライブにアップロードする時にリトライが発生した場合。自宅の無線環境だとリトライする事はほぼありませんが、スマホのテザリング経由だと(電波状況にもよると思うけど)頻繁にリトライが発生し、リトライしていてもGoogleドライブには届いている事も多く、複数回のログがアップロードされてしまいます。
Googleドライブ側はこちらの仕組みを使っていますが仕組み的にリトライが発生するとそのまま全部が残ってしまいます。リトライになること自体はネットの都合なので対応が厳しく、きちんと対策するにはGoogleドライブ上のスクリプトを変更していく必要があると思います。

一方SDカードには安定してログが残るので、当面はこっちを主に使いたいと思います。。。が、これまでSDカードには時刻ぐらいしか記録していなかったので、今回機体名や場所を残す様に変更しました。

SDカードに残すログのフォーマット:
右から時刻、飛行場所、機体名、離陸か着陸か、アップロードしたか、その場合のリトライ回数 を示します。

例:

2023-03-19 22:34:15,KUMAMOTO,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-19 22:34:25,KUMAMOTO,Mobula6,Landing,Upload success,1
2023-03-19 22:34:36,KUMAMOTO,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-19 22:34:45,KUMAMOTO,Mobula6,Landing,Upload success,1

あとコンフィグファイルのデータ中にスペース文字があった場合にスペースを消してしまっていたのを修正しました。
試しに飛行場所にスペースを1文字入れ「KUMA MOTO」にしてみたのが以下の結果です。。。

2023-03-21 23:58:14,KUMA MOTO,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-21 23:58:23,KUMA MOTO,Mobula6,Landing,Upload success,1

ついでに飛行場所に日本語を使うとどうなるか実験しました。
飛行場所を日本語(文字コード:UTF-8)で書いたところ、液晶画面には正常に表示できませんがSDカードとGoogleドライブ、どちらのログにも正しく記録されています。

2023-03-19 22:38:15,熊本県合志市,Mobula6,TakeOff,Upload success,1
2023-03-19 22:38:30,熊本県合志市,Mobula6,Landing,Upload success,1

なおM5Stackには液晶画面に日本語を表示させる方法もある様なので、そのうち試そうと思います。

以上を修正したスケッチをここに載せました。
http://www.hoihoido.com/data/HOILog20230323.zip

HOILog・・無人航空機の飛行日誌を自動化

最近M5Stackにハマっていました。
M5Stackというのはまあ簡単に言うとESP32マイコンにLCDディスプレイやバッテリーを含んだ電源管理回路などをつけて一式をケースに入れたものです。
私が購入したのはCore2という機種で外観はこんな感じ・・・

M5Stackは数年前から出ていて気にはなっていたのですが、値段がちょっとお高めだったりして手を付けていませんでした。で、今更ながら購入してみたら結構便利なんですよね。 特に電源管理回路とかイチから作るとそれだけで何かにハマりそうですが、これなら最初から入っています。

HOILog

という事で何を作っていたかというと「無人航空機の飛行日誌を自動でとるシカケ」です。命名:HOILog。
M5Stack Core2を選んだのは内部に時計(RTC)を持っているので時刻を記録し易いのです。

構造は ざっと下の通り・・・

RC受信機が信号を受けるとSBUSやCRSFプロトコルでM5Stackに伝えます。
(SBUSはフタバ系、CRSFはELRS等で使われるプロトコルです。両方対応しています。)
M5Stack側では信号が来たら飛行開始と判断し、マイクロSDカードに時刻を記録します。そして信号が途絶えたら飛行終了ということでまた記録します。

更にM5StackにはWiFi接続機能があります。これを利用してWiFiが利用できる環境であればASAKICHI先生作の飛行日誌システム( 詳細 はこちら) にもアップロードできるので、Googoleドライブ上のスプレッドシートに記録が残っていきます。

動作しているところはこんな感じ→Twitterに上げた動画

ハードウェア

M5Stack Core2の裏にピンソケットがあります。新品の状態ではここにフタを兼ねた気圧センサー基板がついていますが、今回は不要なので取り外して+5V電源、GND、UART2のRX/TXを引き出し、RC受信機に接続します。
ELRS受信器には入力(RX)信号があり、現在は使っていませんが将来何かに使うかもしれないので繋いでおきます。SBUS受信機の場合は入力信号がないのでM5StackのG14(UART2-TX)端子はオープンにしておきます。

ブレッドボード上に組んだセット(回路図にはないですが分かりやすい様に電源にLEDをつけています)。

ソフトウェア

M5StackはULFlow、ArduinoIDE、Micropython等の開発環境が選択できます。私はこの中から一番なじみのあるArduinoIDEを使用しました。
ところがやり始めて気づいたんですけど、コンパイルが結構遅いんです。ググってみると皆さん同じ問題により、PlatformIOに乗り換えられている様です。PlatformIOとはVisualStudioCode(以後VSCode) に入れるプラグインで、たぶん一言で言い表すと各種マイコンに対応した開発環境だと思います。
確かにPlatformIOでビルドするとかなり早くなり快適です。またベースがVSCodeなので入力補完があったり、キーバインディングをEmacs風に変更したりできて便利です。(余談ですがEmacs風キーバインディングにしたとき、VSCodeの仕様によりEscキーを使用できず、代りにAltキーを使う事になるのが弱点です)。

ところがPlatformIOで作ったスケッチが大体安定した動作になった頃、このブログで公開しようかなーと思い、その前に一旦ArduinoIDEに戻してビルドしたところ何だかうまく動作しません。(M5Core2ライブラリはどちらも同じバージョン(0.1.5)なのですが、もっと奥の方のライブラリのバージョン違いが原因かもしれません。)

とりあえずハマったのは下記の2点。
・タイマーの一旦停止後再起動する場合の動作の違い。
 timerStop(timerxx)で停止した後に再起動するとき、 PlatformIOはtimerRestart(timerxx) で再起動できていたのがArduinoIDEだと止まったまま。
 →対策:timerAlarmDisable(timerXX)で止めて timerAlarmEnable(timerXX) で復帰させる。ただし復帰直後のカウントアップが嫌だったので timerAlarmEnable(timerXX) 直前にtimerRestart(timerxx) も実行した。

・HTTPにPOSTした後同じオブジェクトでGETできない問題。
 Googleドライブへアップロードするとリダイレクト指定が返ってきます。このため一旦POSTでアクセスした後、今度はGETでアクセスするという2段階のアクセスが必要となります。そこでPlatformIO上では、HTTPClient http;で作ったオブジェクトを使いまわして接続していました。しかしArduinoIDEだとエラー(エラーコード400が返る)となりました。
色々試したところ、どうやらArduinoIDE上では GET→GETなら できますがPOST→GETはダメでした。
 → 対策: HTTPClient http2; の様にもう一つオブジェクトを宣言し、POSTはhttpオブジェクト、GETはhttp2オブジェクトで使い分けた。

使い方~セットアップ編~

  1. ArduinoIDEとM5Stack Core2の開発環境を準備する。私はこちらのページを参考にしました。
  2. この投稿の一番下からM5Stack Core2用のスケッチをダウンロードして解凍する。
  3. PCとM5Stack Core2の間をUSBケーブルで接続する。
  4. 「2.」で解凍したフォルダ内のHOILog.inoをダブルクリックするとArduinoIDEが開く。
  5. ArduinoIDEのツールメニュー→ボード名を”M5Stack-Core2″、シリアルポートを該当するポート名(不明な場合はWindowsであればデバイスマネージャーで調べる)に設定する。
  6. 書込みボタンを押して書き込む(若干時間が掛かります)。書き込みが完了したら電源ボタンを長押し(約6秒)して一旦電源を切る。
  7. 上の「ハードウェア」に書いた様にM5StackとRC受信機を接続する。
  8. 設定ファイル”hoilogini.txt”を作成して マイクロSDカードのトップディレクトリに置く。※SDカードの使用は必須です。
  9. 電源ボタンを押して起動!!

設定ファイルについて

SDカードのトップディレクトリに”hoihoiini.txt”の名前で作成します。
内容は1行に1パラメータを設定。1行は256バイトまで。行先頭にディレクティブ、その後1文字以上の空白を置いて設定値を書きます。#記号より右側はコメントです。

設定ファイルの例・・・

# HOILog 設定ファイル 

LOGFILE /hoilog.txt # File name
SCREEN 60 # Screen save time.(Seconds)
RCTYPE SBUS # SBUS or CRSF
RCJUDGE RSSI # RSSI or RCSIGNAL
RCRSSICH 16 # Channel number
RCRSSITH 1000 # Threshold value
RCCONTTIME 3 # Signal continue time
BAUDRATE 100000 # SBUS:100000 CRSF:420000
WIFITIMEOUT 20
SSID XXXXXXXX
PSWD XXXXXXXXX
LOGURL https://script.google.com/macros/s/XXXXX/exec
LOC1 ASO
LOC2 AMAKUSA
LOC3 KOSHI
MODEL1 Tyro99
MODEL2 Switch
MODEL3 Five33

各ディレクティブの説明:

LOGFILE:SDカードに残すログファイルの名前です。
SCREEN:指定の秒数イベントがないと画面を暗くします。ボタンを押したりRC信号が変化すると表示を再開します。値が0の場合は常に表示です。
RCTYPE:RC受信機の信号フォーマットがSBUSかCRSFかの指定です。
RCJUDGE:飛行中の判定をRC信号の有無で判定するか、RSSIで判定するかの指定です。受信機によっては電波が途絶えても最後の状態を維持するので単に信号が途絶えたかどうかでは判別できません。その場合でもRSSI(信号強度)がどこかのチャンネルに出ていればこれを基に判別可能です。
RSSICH:RSSI によって飛行中である事を判定をする場合、RCチャンネルの何番がRSSIを示すかを指定します。
RSSITH:RSSI によって飛行中である事を判定をする場合、 RSSICHで示すRCチャンネルの値が幾つ以上なら信号ありとするかを指定します。CRSFの信号範囲が172~1811、SBUSも大体その程度なので1000あたりを入れておけば大体OKだと思います。
RCCONTTIME:瞬間的な信号の切断やノイズによる入感を除去するため、
(立上り/下り共) 信号が何秒間連続で続いたら変化したと判断するかを指定します。
BAUDRATE:RC信号のボーレートを指定します。SBUSは100000固定。CRSFは420000がよく使われる値です(115200も使われる様ですが手元に確認する環境がなく、動作を確認していません)。
WIFITIMEOUT:WiFi接続時、何秒以内に接続できなかったらあきらめるかを指定します。
SSID:WiFi接続のSSIDを指定します。
PSWD:WiFi接続のパスワードを指定します。
LOGURL:Googleドライブにアップロードする為のGoogleApplicationScriptへのURLです。こちらのASAKICHI先生の動画の8分20秒頃に説明があるURLです。
LOC1~5:飛行場所を5つまで設定できます。M5Stack上のメニューでこの中から一つを選択してログに残せます。電源投入直後はLOC1が選択されています。MODEL1~5:機体名を5つまで設定できます。 M5Stack上のメニューでこの中から一つを選択してログに残せます。 電源投入直後はMODEL1が選択されています。

※LOCxやMODELxの値に日本語等の2バイト文字を入れるとどうなるかは試していません。

使い方~操作編~

電源を入れるとまずWiFiに接続した後、下の基本画面になります。
WiFiに接続できなかった場合はSDカードへの記録のみ行い、Googleドライブへのアップロードはしません。
この状態でRC電波を受けるとRCCONTTIMEに設定した値の秒数信号が続く事を確認後、SDカード、およびGoogleドライブのログに記録を残します。
Googleドライブへ記録する間、飛行状態表示部に「START UPLOAD」又は「STOP UPLOAD」と表示し、この間RC信号モニタや時計は動作しません。
Googleドライブへの記録は失敗すると3回までリトライします。最終的に成功したか失敗したかはSDカードに記録します。なお稀にですがサーバが正常に受付けて成功した旨の通知を返したのにM5Stackまで届かなかった時はリトライするので複数回の記録が上がってしまいます。その場合はSDカードのログを参照しながら手動でGoogleドライブ上のデータを修正する必要があります。

M5StackのCore2にはボタンがA,B,Cの3つ搭載されています(このボタンは物理的な接点ではなくタッチセンサーになっていて、押した感触が伝わりにくいですがちゃんとボタンとして機能します)。
基本画面ではボタンCを長押しすると設定画面に移ります。
ボタンA,Bには機能を割り当てていませんが、スクリーンセーバーからの復帰には反応します。

設定画面(MAIN MENU)
上から時計設定、電源OFF、機体選択、飛行場所選択、メニュー終了です。
反転文字になっているところが現在対象となっている行で、ボタンAを押すと上、Bを押すと下の行に移動し、Cを押すと選択されます。
「電源OFF」を選択するとシステムの電源を切ります。「EXIT MENU」を選択すると基本画面に戻ります。
時計設定、機体選択、飛行場所選択の各画面を以下で説明します。

時刻設定画面
ボタンA,Bを押すと反転文字になっている部分の値が上下に変化します。ボタンCは決定ボタンで次の値に進みます。年月日~秒まで進み、次にボタンCを押すと図に「NEXT」と表示された部分に移ります。ここではボタンA,Bを押すと「NEXT」、「SAVE&EXIT」、「EXIT:NonSAVE」と順に変化して行きます。それぞれの状態でボタンCを押すと以下の動作をします。
・NEXT:最初の「年」の設定に戻ります。
・EXIT:NonSAVE:時刻は変更せずにメインメニューに戻ります。
・SAVE&EXIT:内臓時計に設定時刻をセットし、メインメニューに戻ります。

機体選択
ボタンA,Bで対象行を上下させ、ボタンCで選択すると機体が選択されてメインメニューに戻ります。

飛行場所選択
ボタンA,Bで対象行を上下させ、ボタンCで選択すると飛行場所が選択されてメインメニューに戻ります。

ログ

実行後はSDカードのLOGFILEで指定したファイル名に以下の様なログが残っています。

TakeOff,2023-03-05 22:46:36                  ←離陸時刻
Upload success,2023-03-05 22:46:36 ←離陸をGoogleドライブにアップロード成功
Landing,2023-03-05 22:47:13 ←着陸時刻時刻
Upload success,2023-03-05 22:47:13 ←着陸ををGoogleドライブにアップロード成功

Googleドライブ上には(アップロードしていれば)次の様なログが残ります。

スケッチ

HOILog20230306.zip

※このソフトウェアを使用されてもし問題が発生しても責任は持てませんのでそのあたりはよろしくお願いします。