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カブ系エンジン用自動進角CDI

先日ミニマム構成なCDIを作った事を書きました。今回は自動進角機能を盛り込んでみます。

※5/7追記:この記事で純正カブの進角を28度と記載していますが、正しくは
 27度でした。 1度の違いで大きな影響はないと思いますが訂正いたします。

進角について

ここで言う進角とはエンジンの点火タイミングの事です。よくあるエンジンの行程説明ではピストンが上まで上がり切ったタイミング(上死点)に点火していますが、実際には混合ガスが燃え広がるのに時間を要するので上死点よりも少し早めにプラグに火を飛ばします。
この時どれくらい早めに点火するかをクランクの回転角で表し「進角xx度」と表現します。

我が家にある(1995年頃の)スーパーカブ50では回転数に係わらず進角は28度辺りに固定されています。28度というのはピストンが上死点に達するよりもクランクが28度早いタイミングでプラグに点火する事を意味します。
情報によると90ccのカブでは15度~28度の自動進角CDIになっているとか。またDAYTONA製CDIをレーシングモードにすると22度~37度位を自動進角する様です。

構想

スーパーカブ50ではフライホイールの回転角をピックアップコイルが検出してCDIにパルスを送ります。CDIではこのパルスが入ったら即時プラグに点火するので、進角が28度固定となっています。
よって自動進角する為に28度よりも遅らせるにはアナログ的な遅延も可能ですが、進める事は簡単にはできそうにありません。だってピックアップパルスよりも早く点火信号を出すのですもの。。。


これを可能にする方法ですが、多分それ以前の回転数を元に次の回転数を予測し、ここぞというタイミングに点火するしかなさそうです。(車体側を改造してピックアップタイミングを大幅に進めてしまえば遅らせる処理だけで済みますが、改造のリスクが大きそうですし。。。)
この複雑な動作を実現するにはマイコンで処理するのが良いでしょう。

という事でピックアップパルスをマイコン(Arduino-Nano)に入力し、良い頃合いに点火信号を出す仕組みにしようと思います。

回路

以下の回路でやってみます。
ACジェネレーターの電圧をコンデンサやサイリスタを使ってイグニッション信号を出す部分は前回のミニマムCDIと同じです。
違うのはピックアップコイルのタイミング信号をマイコン(Arduino-Nano)に入力するあたりで、このマイコンがタイミングを見計らってサイリスタのゲートを駆動します。
また設定変更用にコントローラーを接続する為の13pinのコネクタを設けています。
なおマイコンを動作させる電源は車体からDC12Vを貰う事にし、Arduino内部のレギュレータで5Vに落としています。

コントローラーは次の回路で、ボタン4つとLCD(よくある1602タイプのヤツ)を接続しています。

作ったハードウェア

最終的には防水する必要があると思いますが現時点はこんな状態でテストしています。

フラットケーブルの先には設定用コントローラーが繋がっていて回転数毎の進角を変更できます。
またカブにはタコメーターが無いのでLCDに回転数を表示します。
コネクタで接続しているのでセッティングが決まったら取り外して本体のみで使用します。

Arduinoに入力するDC電源は写真の様な分岐線を作ってウィンカーリレーの配線から分岐しました。

ソフトウェアの動作

まずArduino-NanoのEEPROMにマップデータを保存します。
マップデータは4点の回転数(1000,3000,5000,7000rpm)に対応する進角値とします。各数値の間は直線で補完し、1000rpm以下は1000rpmの設定値、7000rpm以上は7000rpmの設定値を用いる事にします。
グラフにすると下の様な感じ(具体的な値は実験中)。

横軸が回転数(rpm)、縦軸が進角(度)

動作としてはピックアップパルスが入る度にタイマーで一つ前からの時間を測定し、それを回転数に変換して上記マップに基づいた進角値を求め、次に点火するまでの時間を算出します。
この時、ピックアップタイミングの28度よりも点火タイミングが遅い場合と早い場合に応じて色々と処理が分かれます。

まず28度よりも遅い場合・・・
下図の様に進角28度のタイミングで車体からパルスが来るので、ここからAの時間分遅らせた赤線のタイミングで点火します。その後のTと書いたタイミングが上死点です。

28度よりも早い場合・・・
1周期よりも少し短いBの時間分遅らせて点火する事で、次の周期では28度よりも早い赤線のタイミングに点火します。

面倒なのは28度よりも遅い状態と早い状態を切り替えるときです。

遅い→早いに切り替わる場合・・・
切替りの周期ではA,Bの2発の点火信号が必要となります。

早い→遅いに切り替わる場合・・・
こちらは逆に全く点火させない周期が発生します。

遅角を予定していたのに次のパルスが来てしまった場合。。。
回転数が下がってくる上がっていく時には予定していた点火タイミングよりも先に次のパルスが来てしまう事も考えられます。その場合はとりあえず直ちに一発点火を発生させます。

ちょっと面倒でしょ。でもまあこれらの考えられるパターンへの対応をプログラムしていきました。

動作させてみるが・・・

実車に繋いでタイミングライトを当ててみます。
本来ならアクセルを開けると回転数が上がるに応じて進角も進んでいく筈ですが、少し遅れて進角が進みます。特にアクセルを閉じた時は逆に進角が大きくなり、十分回転数が落ちてから進角が戻ります。
どうやら回転の加減速が早いので直前の周期が次の周期と同じ前提だと無理がある様です。

加減速予測

対策として回転数の加速/減速を加味して次の周期を予測する事にします。具体的には前2回分のパルス間隔の変化(=加速度)が次も続くと仮定する事にします。
更に4ストロークエンジンでは一回転毎に燃焼する為パルス間隔も変動している可能性があるので一回置きに計算します・・・言葉で説明し辛いですが図にすると下の様になります。

これで動作させると下の動画の様にそれっぽい動作をする様になりました。

それっぽく動くようになった動画

マップのセッティング

以上で思惑通りに動作していると思います。
そこで実際にカブで走ってセッティング中ですが、今ひとつ進角の効果が体感できません。
車体が古くて本来の性能を発揮できていない事も十分考えられます。。。
点火タイミングだけじゃ大きく変わらないのかな。。。もう少し試行錯誤してみます。