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レーザー加工機Grbl(FluidNC)化 ~5~

レーザー加工機の制御をLinuxCNCからGRBL(FluidNC)に変更する件の続きです・・。

前回までで思惑通りの動作が確認できたので、コントローラー基板を最終型として作り直したいと思います。

なお前回までは下図の構成でした。
元々LinuxCNCとパラレルポートで接続していた制御基板から パラレルケーブルを外して代りにGRBL基板を接続するというもの。 モータードライバやレーザー制御用フォトカプラ等は旧制御基板に載せたままなので手軽にGRBLを試す事ができました。

しかし、このままだと配線がグチャグチャで邪魔になるし、次に壊れたら絶対色んな事を忘れていて苦労するのが目に見えています。
そこで全部を1枚の基板に入れて作り直したいのです。

回路

回路図はこれ。

(後日の自分のために)簡単に説明すると・・・

  • 電源は5V(制御用)と12V(動力用)の2系統を入れます。
  • Z軸は使いませんが将来の為にパターンだけ作り、不要な部品は載せないでおきます。
  • ESP32のピンアサインは前回とは若干変更しています。
  • センサー類はX,Y,Zのリミットスイッチに加え、E-Stop、水流センサー、ドアオープンを備えます。
  • センサー類は全て通常運転時がL、異常時とかリミットスイッチに当たった場合はHになります。
  • リミットスイッチ、E-Stop、ドアオープンは5Vにプルアップしており、通常運転時はスイッチでGNDに落としてLとなり、異常時(及びリミットに当たった時)はSWが離れてHになります。
  • 水流センサーは今まで動作が異なっていたので運転時(水が流れている時)にLになる様改造しました(これはHかLが出てくる)。
  • センサー類は全てESP32に接続していますが、水流センサーとドアオープンについてはFluidNCで無視しており、基板上でレーザーをOFFするに止めています。
    水流無しやドアオープン時でもモーターは動いてほしい為ですが、将来的には変更するかもしれません。
  • レーザーパワー制御のPWMには速度が速いTLP2745を使っています。
  • 予備入力のExtensコネクタは当面ジャンパでショートして使います。

基板パターン

下記のパターンで作成。ちょとサイズが大きくなってしまいました。
片面基板なので、赤色線はCAD上では表面配線ですが、実際にはリード線をはんだ付けします。

FluidNCの設定ファイル

参考に→configRev2.yaml

部品実装・加工機本体に接続

組み立てました。

んー。この辺りに固定したいな・・・

基板を固定する為、加工機のテストを兼ねてこういうパーツをMDFから切り出して作りました。 これに基板を載っけて取付けようと思います。

あ、ナットを止めるスペースがない・・・

仕方ないのでケースを少し削ってナットのスペースを確保。

加工機に取り付けました。見やすい様に傾けて固定。

あ、こんどはUSBコネクタを挿すスペースがない。

USBコネクタは・・・どうしましょう。。何か考えます。

レーザー加工機Grbl(FluidNC)化 ~4~

また謎が発生

前回、CO2レーザーの出力を0にした時にもレーザーが漏れ出るという問題で、下図の47KΩを少し下げて対策したのでした。

この時、出力設定を17%程度にしたあたりからレーザーが出始める様になったので、もう少し調整して0%に近い所から出る様にしようと考えました。

前回の対策では47KΩを下げる為に220KΩを並列に接続した事で合成抵抗を38.7KΩにしていました。実はこの場合のざっくりした計算では5%程度からレーザーが出始めると見込んでいたのですが大きく違います。こうなるとカットアンドトライで並列抵抗を大きくしてみるしかありません。そこで510KΩとか1MΩを付けてみたのですが・・・出力開始点が少ししか下がってこないのです
なんか変です。そこで並列抵抗を外して元に戻したところ、これでも10%程度からしか出てきません

そもそも0%でもレーザーが出てしまうという問題だったのですが症状が消えてしまったのです。

なぜ?

やった事といえば電源をバラして下の写真の様に抵抗をハンダ付けしただけです。

この2点のハンダを溶かし直した事で何かが変わったのでしょうか?

そこで改造前の写真を丹念に拡大していくと・・・なんかこのハンダ付け怪しく見えませんか?

今となっては確かめる術がありませんが、ここが接続不良で数KΩ高くなっていたとしたら辻褄が合います。

本来47KΩのところが少し高めになり、そのため1IN+の電圧が僅かに下がります。するとアンプ1の出力が少し下がってレーザーをOFF出来なかったと。。。そこに抵抗を並列に付ける時にハンダを溶かし直したので接触が回復して本来の値に収まったと。。。

真相は分かりませんが現時点は元の抵抗値のままでレーザーをOFFにでき、出力開始点は10%程度になっており、多分これが本来の姿です。

うーん。何だったんだぁ?

レーザー加工機Grbl(FluidNC)化 ~3~

前回の続きです。
前回はレーザー加工機のコントローラーをLinuxCNCからFluidNCに変更したところ、ラスター描画が上手くいかないという状態でした。 LinuxCNCの時はレーザーパワーは固定し(ボリュームで手動設定)、出力のON/OFFのみスイッチングしていましたが、今回レーザーパワーをPWMで制御する方式に変更して写真の描画も目論んでいるのです。

ラスター描画の状態。

描画した結果が下の状態。縦線と三角形だけ描画したいのですが、絵が無い部分も焼けており、S0状態なのにレーザーが漏れ出ている様です。(S0は本来スピンドルの回転数を0にする命令ですが、ここではレーザーパワーを0にする意味となる)

ならばとS0の時にレーザー電源出力をOFFにする様「disable_with_s0」「true」に設定して同じGコードを実行したのが下の状態です。

こちらは往路と復路で位置が大きくずれています。

なおS0というのは下図レーザー電源のIN端子に入れる電圧を0Vにするという事で実際にはPWMにてDuty0%(常にL)を入れています。そして電源出力OFFとはK+、K-間を切断する事を意味します。

LasePS

まあ「disable_with_s0=true」で上手くいったとしても最小出力付近の制御が出来なくなるでしょうから、やはりS0時のレーザー漏れを無くすのが本来の道でしょう。

レーザーお漏らしの調査

なんでS0時にもレーザーが漏れ出てくるのか。まず疑ったのはPWM波形が綺麗なLになっていないんじゃないかという事。しかしオシロスコープで見たところはちゃんとLに見えます。でもLレベルが微妙に浮いていたりノイズが乗ってたりする可能性もありますよね。
そこでレーザー電源のIN端子をGNDに短絡して動作させてもやはり漏れ出ていました。ということでレーザー電源側の問題と思われます。

レーザー電源の調査

レーザー電源内部の問題っぽいですが20KV前後を出力する電源なので迂闊に触るのは危険です。

注意:ここから下はレーザー電源の蓋を開けていじくります。レーザー電源の内部はかなりの高電圧な部分があり危険です。これを参考にして同様の作業をされる場合には十分に注意してください。もし事故が起こってもこちらでは責任を負えません。

まずは情報収集から。ネット上で検索して同様な問題で困っている記事を探しましたが見当たりませんでした。
しかし「マーティの工房日誌」さんの所ではレーザー電源をバラして回路図まで描かれており、これが素晴らしく参考になります。
但し40WのCO2レーザー用という点は自分のと同じですが、中の基板は異なります。でも大体の構造は同じですね。

一応自分の電源についても見ながら、レーザーパワーの制御部分を回路図にしてみました。これには基板を裏と表から写真を撮り、下の様にPC上で裏面だけ反転表示にすれば配線を追いやすいのです。
なお部品面の配線は見えない部分もあり、実物を見ても分らない部分はマーティさんの資料に従いました。

制御ICはマーティさんの電源と同じTL494のSOP版で、周囲の回路もほぼ同じですね。

パワー制御の動作概略

TL494のデーターシートには下図の様なブロック図が掲載されています。
ざっくり言うとPWMコンパレータの出力がLになった時にレーザーが出ます。そしてPWMコンパレータは発振器のCT端子から来るのこぎり波とエラーアンプから来る信号を比較しています。

のこぎり波は反転入力なので、エラーアンプ信号よりものこぎり波が高い時にコンパレータ出力がになりレーザーが発射されます。
そしてデーターシートの記述によるとのこぎり波は0~3Vで変化しますが、図中に0.7Vが加えられているので0.7~3.7Vで変化する事になります。

図にするとこんな感じ。

今回はレーザーを全く出したくない時に少し出てしまうという問題なので、エラーアンプ出力が3.7Vよりも高くなっているべき所がどうなっているかを中心に見ていきます。

ではマーティさんの回路図と自分の実物を見比べながらエラーアンプ回りの要所のみ書き出したのが下の図です。

まず入力のPとINは両方共0Vの状態です。
エラーアンプは2個ありますが2側は使用していません(無効化するのに両入力とも0Vでいいのかという疑問はありますが動作しているので先に進みます)。
エラーアンプ1側はIN信号をゲイン1倍で反転増幅し、基準点は47Kと24Kの分割電圧となっています。
フォトカプラPC817も少しは電圧降下がある筈ですがデーターシートのグラフでは細かいところまで読み取れません。とりあえず0.1Vとしておきます。
するとIIN+は1.76VなのでINが0Vの時FBは3.52Vとなり、レーザーをOFFできる電圧3.7Vを超えていません
これが原因なのか???だとすれば経年劣化とかではなく自分以外の所でも同じ事が起こっていそうですが・・・

レーザー電源改造

とりあえず試してみましょう。それにはIIN+が現在1.76Vなのを1.85Vにしてやりたいです。その為には現在47KΩの抵抗を43KΩに交換すればよいのですが、手っ取り早くやるために手持ちの220KΩを並列に付けてみました。これだと合成抵抗38.7KΩでIIN+が1.97Vとなり、ちょっと上げ過ぎ感はありますがまずは試しです。

やってみたところ予想通りS0部分のレーザー漏れは無くなりました。

折角なので写真を描画してみます。(いつだかのHONDA-Jetの写真)
・・・中間色が全く出てませんね。

どれくらいのS値から出力が出るか調べていくと最大に対し17%程度からでした。もう少し抵抗値を詰めた方が良いかもしれませんがLaserWeb4の出力範囲を調整していくと・・・

結構写真っぽく描画できましたね。

そして・・・

抵抗値、どうしましょう?1~2%程度からレーザーが出る様に調整したいですが沼にハマりそうです。半固定抵抗になってれば良いのに。

またINへの入力は0~5VのPWMですがリニアに反応する範囲は3V幅という事になります。これ仕様なのかな?確かにボリュームで調整していた頃も70~80%付近から上は最大電流になってしまい変化しなかった様な(更には最小でもレーザーが出ていましたね)。
エラーアンプ1のゲインを下げて5V幅フルに反応する様にしてみたい気もします。。。

あと気になっているのは出力電流のリミッター的なフィードバックが1IN+に入っている様です(すみません、上の回路図では省略していますがマーティさんの回路図には載っており半固定抵抗DLで調整できる様です)。
この調整がずれてないかなというところを確認していませんでした。以前はほぼ20mAジャストが流れていたのでずれていたらDLを調整してみようと思います。

・・・という事でレーザー加工機のGRBL化はもう少し続きそうです。