電子回路をイジっているとコンデンサやコイルの値を測定したい時があります。
コンデンサについては割と安物のマルチメーターでも測定レンジがあるので何とかなりますがコイルまで測定できる物は少なく、これまで簡易的にブレッドボード上に回路を組んで測定したりしていました。しかし作業後バラしてしまうのでその都度組み直すのも面倒です。
ネットで見ると秋月電子にはDE-5000というLCRメーターが現時点9480円で売られています。そろそろ奮発してこれを買うか?と思っているとLCR-T4なる物が目につきました。AmazonやAliexpressでは多数のショップから出品されている様で値段も数百円~二千円前後です。
LCRに加えてバイポーラトランジスタやFETも測定できる様で、驚くのは3本の測定端子に適当に繋いでボタンを押せば、それが何の部品であるかも含めて知らべてくれるらしいのです。
画像で見る限りほぼマイコン1個で測定している様なので精度は望めないと思いますが、まあ自分の用途ではコイルの場合は大体の値が分かれば十分。あまり長く待ちたくないのでAmazonに発注しました。税込み1690円です。
そして到着。
表側
裏側
どうやらこのLCR-T4には色々なバージョンがある様です。オリジナルはAVR(現マイクロチップ)のATmega328等が載っている様ですが届いた基板にはAPT32F172という謎のICが載っています。
もしかしたらATmega互換かと思って調べたところ中国語のデーターシートしか見つかりませんでしたがC-Sky Microsystemsの32bitマイコンらしいです。中国でATmegaから移植したんでしょうか?
動かしてみる
では006Pの角型9V電池をつなぎ、ネット上の記事に従いキャリブレーションをやります。
その為には3本をショートさせる必要があるので下の様なショートピンを作りました。
このショートピンを繋いでボタンを押すとキャリブレーションが始まります。
その後メッセージに従いピンを外し、そして0.1μFのコンデンサを差して暫く待つと完了となります。
しかし「0.1μF以上のコンデンサをつなげろ」というメッセージですが「以上」ってのは精度は不要なんでしょうか?そのあたりはイマイチ分からないままとりあえず先に進みます。
では過去の測定で100μHだと思っているコイルを測定してみます。
130μH(0.13mH)ですね。過去の測定も簡易的なものなのでまあこんなものだと思います。
トランジスタもコンデンサもつないでボタンを押すだけでどれがどの端子かを含めて表示してくれます。便利ですねぇ。
LCR-T4について調べる
この基板、ネットで直ぐに見つかるサイトではあまり詳しい情報が示されていなかったので、もう少し粘って調べるとGitHubに以下のページに辿り着きました。
https://github.com/Mikrocontroller-net/transistortester
そして140ページもの詳細なドキュメントが下記の場所に。
これによるとオリジナルはやはりAVRマイコンみたいです。またLCR-T4基板(何故かLCD-T4と書かれている)についても言及されていますがAPT32F172版の記述は見つかりません。
またボタンを長押しするとメニューが出て色々と設定ができる筈ですが、自分の基板では何も起こりませんでした。マイコンが異なるので上記サイトのファームを書く訳にもいかず・・・という事で購入する時はATmega搭載の基板を選ぶ方が良いかもしれません。
(因みにパッと見ではATmega版はマイコンの横に水晶振動子が載っていますがAPT32F172版はこれが見当たりません。また基板の取付け穴の位置も違う様です。)
次に気になったのは電解コンデンサをどっち向きに挿入するのが良いかです。流石に電解コンデンサの極性まで自動判別はできないでしょうから適当につなぐと逆電圧を印可するのでは? この辺りを上記のドキュメントで調べると次の様な説明がありました。
Normally the polarity of part is irrelevant, you can also connect pins of electrolytical capacitors in any order. The measurement of capacity is normally done in a way, that the minus pole is at the test port with the lower number. But, because the measurment voltage is only between 0.3V and at most 1.3V , the polarity doesn’t matter.
Google先生に訳してもらうと・・・
通常、部品の極性は関係ありません。電解コンデンサのピンを任意の順序で接続することもできます。 容量の測定は通常、マイナス極が番号の小さいテストポートに来るようにして行われます。 ただし、測定電圧は 0.3V ~ 1.3V の間だけなので、極性は関係ありません。
マイナス側を小さい番号に繋ぐ方が良いけどあまり気にするなという事みたいですね。
それでも気になったのでコンデンサを測る時の波形を見ると下の様になっていました。コンデンサを1,2ピンに接続し、青色が1ピン,黄色が2ピン、紫色は差電圧(黄-青)です。結構上下逆転している瞬間があるみたいですが気にしないでおきましょう(でもタンタルコンデンサみたいに逆電圧に特に弱いのは避ける方が良いかもです)。
どうやって測ってんの?
上記のドキュメントに英語で詳しく書かれている様なのでその内読んでみたい(たぶん読まない)と思いますが、測定端子は3本共下の様な接続になっている様です。
これだけで測っているんですね。
ケースを作る。
便利に使えそうなのでケースを作りました。本体はMDF、上蓋は透明アクリルをレーザーカットして作成しました。
キャリブレーション用ピンはそのままだと絶対無くす自信があるのでケース内に収納できるポケットを設けています。
なかなか便利です。