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RTK基準局の座標について考えていたら深みにハマった件

先日、令和8年熊本地震の前後で電子基準点データー提供サービスからダウンロードしたRINEXデーター記載の基準点座標が1mmも変わっていない件と、国土地理院サイトのQ&Aには「正確な値は日々の座標値等を見る様に」となっている事を書きました。
という事で、ちゃんと日々の座標値データを見たところ、色々と分からなくなって深みにハマってしまった記録です。

なお私は測量や地球物理の専門家ではないので、下記に書いている事はRTK基準局への影響を調べていたら気になった事を素人が書いているに過ぎません(何か判断をする場合はちゃんとした人に聞いてくださいね)。

その前に何を気にしているのか

自宅のRTK基準局のアンテナ位置を正確に知るため、3月の時点では自宅受信機で取ったログと電子基準点データー提供サービスからダウンロードした補正値(RINEXデータ)とをRTKPOSTを使って後付け解析しました。 その時RTKPOSTの設定としてBase stationという項目があり、電子基準点熊本の座標を設定する必要があるのですが、この時はRINEXヘッダーから取る様に設定したのです。

実際にはここに何を設定するのが正しいのかを気にしています。
ここに設定する座標が1mずれていたら解析結果もほぼ1mずれるのです。

国土地理院サイトの日々の座標値を見てみる。

という事で国土地理院の日々の座標値ページから電子基準点950465(熊本)のデータをダウンロードしました。そして緯度、経度、高度をグラフ化すると・・・

地震のあった7月28日を境に緯度がはっきり変化しているのが分かります。ざっと0.000001°なので距離に換算すると10cm程度。

そこで地震前の一週間(2026/7/19~7/25)と地震後の一週間(2026/8/1~8/7)の平均値を比べると・・・やや西よりの北方向に10cm程移動していますね。高度については1mm程しか変わっていない様です。
(なお距離への変換は簡易的に行っています。実際には微妙に楕円体の地球を周囲4万Kmの完全な球体として算出。)

950465(熊本)緯度(度)経度(度)高度
7/19~7/25平均32.84210106130.7648065692.086
8/1~8/7平均32.84210198130.7648064392.087
差0.00000092-0.000000130.001
差を距離に換算(mm)102.667-11.8691.082

因みに被害が大きかった八代市千丁の電子基準点データを見ると、北にも東にも60cm以上変化しています。合成すると北東方向に87.46cm。 更に高さ方向にも30cm程沈んでいるのでこれも含めると93.19cm変化している様です。
怖いです。

950093(千丁)緯度(度)経度(度)高度
7/19~7/25平均32.54640605130.6456020040.289
8/1~8/7平均32.54641160130.6456086239.967
差0.000005550.00000662-0.322
距離(mm)616.984619.907-321.786

という事で、電子基準点熊本のRINEXヘッダ内の座標値は殆ど変化していませんが実際には10cm程度動いているっぽいです。
年のため最新の電子基準点のRINEXデータ、前回取りましたがもう一度9/3時点のを取ってみたところ、やはり最大でも1mmしか変わっていません。(こちらはECEF座標系で単位はmなのでそのまま読めます。)

XYZ
2026/03/18-3502497.82964062727.08233439309.0632
2026/08/11-3502497.83014062727.08263439309.0622
2026/09/03-3502497.83014062727.08263439309.0620

ではRINEXヘッダの座標と日々の座標値の間でどれくらい差があるか

9/3のRINEXヘッダの座標を緯度経度高度に変換(国土地理院のこちらの式使用)すると32.84209962° / 130.7647963° / 92.263mとなりました。
これを先ほどの日々の座標値と比べると・・・1m以上違います。

950465(熊本)緯度(度)経度(度)高度
日々の座標値 8/1~8/7平均32.84210198130.7648064392.087
2026/09/03 RINEX32.84209962130.7647936392.263
差(mm)-262.716-1195.3180.176

うーん。RINEXヘッダ内の基準点座標は’APPROX POSITION ’という事ですし、やはりアテにしてはいけないんでしょうね。
だとしたら日々の座標値の最新値をセットするのが正しいのでしょうか?
でもそれって毎日少しづつ変っていくんですよね。

もう一つ気になるのが「基準点測量成果」

こちらは公共測量や地図作成の際に用いる基準点の座標だそうです。
(国土地理院のFAQによると公共測量には日々の座標値ではなくこの測量成果を使うように書かれています)

日々の座標値は文字通り日々変わっていくのに対し、こちらは一旦基準点として座標を決めたら当分は変わらない基準点として扱うそうです。

但し大地震等で大きく変動した場合には新たに決め直すとの事で、正に今回の令和8年熊本地震の影響で8月13日に再設定されています。→https://service.gsi.go.jp/kijunten/app/map/
これ先日の投稿で下記アナウンスがあると書きました。これを書いた時点では良く分かっていなかったのですが、この事だったんですね。
令和8年熊本地震に伴う基準点成果の公表停止について

という事で「基準点測量成果」の座標を見たところ地震後の日々の座標値とくらべても約73cm程ずれています。最新の日々の座標値とほぼ同じ値になるのかと思っていたのですが違う様です(どうやって決めているのでしょう?)。
(なお「基準点成果閲覧サービス」のページに「無断使用は測量法により罰せられる」的な事が書かれているので念のため具体的な座標値は書いていませんが、気になる方は直接見てください)

という事で候補は3つ

電子基準点の座標としてRTKPOSTに入力する値の候補は3つになりました。

・電子基準点データ提供サービスからダウンロードしたRINEXファイルヘッダの値
・日々の座標値の最新値
・電子基準点測量成果

RINEXファイルヘッダについてはそもそもが’APPROX POSITION’という事なので、これを使うのは良くなさそうです。
日々の座標値を使うのが一番正確そうですが、これは日々変わっていきます(まあ普段はそんなに大きくは変わらないけど)。
電子基準点測量成果を使うと基本は固定ですが現実の値とは異なります。

どれを使うのがベストか、ググってもハッキリ書いたものが見つからないので2人のAIさんに尋ねたところ、どちらも第一候補は「日々の座標値」と答えました。
これ自分的にも一番しっくりきます。そもそもその座標値こそがGNSSで扱う本来の位置で、測量成果の方は人間が取り扱う都合で決めているだけですもんね。
それにもし後から電子基準点測量成果に合わせた座標で測位したくなった場合はその時点で補正すれば良さそうですし。
なお最初から公共測量に使うつもりなら電子基準点測量成果を使うのが良さそうです(が、そういう人はこんなページではなくちゃんとした資料を見られると思いますけど)。
他の一般公開されている基準局はどうやっているのでしょう?

自分なりの結論(どなたか詳しい方、コメントください)

なんか、地震で変動した影響から始まり、それ以前の自宅RTK基準局の座標を出すための基準座標をどうするかでハマってしまいましたが、自分の用途では日々の座標値の最新値でRTKPOSTを動かすのが良さそうです。
と言いつつ、実際のところ現状の(RINEXヘッダー座標で計算した)ままでも、基準局とRoverの位置関係は家の屋根と庭の距離なので相対的な差はなく殆ど気分の問題です。
それにもし日々の座標値から計算し直したら芝刈りwaypointファイルも全部修正する必要があるので、もうこのまま進めても良さそうな気がしています(変更するなら早い方が良いのですが)。